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出陣

しゅつじん #832

出陣

しゅつじん

額田六福(ぬかだろつぷく)(一八九〇-一九四八)の戯曲
額田六福は岡山県生れの劇作で、岡本綺堂を師とし『白野弁十郎』『山本勘助』等を発表している。
本作『出陣』は彼の戯曲の処女作であり、早稲田大学在学中の大正五年(一九一六)に、創刊されたばかりの雑誌『新演芸』が募集した歌舞伎座用脚本に一等入選した作品。 原稿用紙九五枚にのぼる三幕物で、大正六年一月に歌舞伎座で上演された。
この脚本は、第一次世界大戦が起り日本が中に対華二一ヵ条の調を迫り軍隊を中に派遣させた代背景のもとに執筆された。
内容としては、を弘安四年(一二八一)二月より五月すなわち蒙古襲来(弘安の役)の時期を中心に、蒙古襲来に対する幕府の対策、その幕府の命をうけて戦地にはせ参じていく武士の様子、出陣する武士を励ます日蓮聖人の姿等を描写している。
秋田小太郎という武士と二階堂信濃守の息女渚とは恋仲にある。 女は恋を命とする。 戦さとなれば逢う日はいつかと渚に言われ、恋か戦地に赴くか悩む小太郎の前に日蓮聖人が現れ「今の戦は何の為じゃ。 の光輝(ひかり)を輝かす戦じゃ」と語り小太郎に出陣するよう説く。 渚には「百年無用に生きるよりは、ただ一日志す道に生きる方が遙かに尊い」「行くも止まるも心は一つ。 たましいは千里を通う。 ここにとどまっていて、遙かに誠を運ぶの出来ぬまで弱い心か」と諭して、いさぎよく止まって小太郎出陣の門出を送らせる。
主な登場人物は二十余人。
第一幕第一場は鎌倉鶴岡八宮の社頭、第二場は二階堂信濃守の邸。
第二幕は名越の里の農
第三幕第一場は鎌倉評定所、第二場は鎌倉由比ヶ浜、という構成になっている。
この脚本を強く推挙した坪内逍遙は「筋も段どりもよく、人物の配合もよい。 恋の葛藤もあれば意志の衝突もある」と絶賛した。 また、この戯曲を演じた新国劇の沢田正二郎は「時代趣味の常道を歩むこの戯曲こそ現今民衆の興味を知る最もたしかなバロメーター」と評した。 他方批判も多く秋田雨雀は「作者はというものに対してどのような思想をもっているか明らかでない」と指摘した。
《渡辺やえ子編『額田六福戯曲集』》

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