阿娑縛抄
阿娑縛抄
あさばしょう
全二二八巻。
天台宗承澄(しようちよう)(一二〇五-八二)撰。
『仏全』三五-四二巻。
本書は台密における諸作法・口伝を抄録したもので、仁治三年(一二四二)から弘安四年(一二八一)に至る約四〇年間に集記編述された。
「阿娑縛」とは『大日経疏』から出たもので、阿は仏部、娑は蓮華部、縛は金剛部を示し、この三字をあげれば密教のすべてを統摂するが故に、密教に関するすべてを列記する意によって本書に名づけられた。
内容は第一諸私記、第二諸仏、第三諸経、第四諸観音、第五諸菩薩、第六諸忿怒、第七諸天、第八諸作法、第九諸雑抄からなり、台密の教相事相が載録されている。
本書は台密一三流の中では穴太流の伝書であるが、諸流みな本書を写伝して所依の書としており、台密の行法を研究する上で欠くことのできない好資料である。
承澄が本書を編集していた時期はちょうど日蓮聖人の活躍していた時と重なり、聖人が比叡山で学んだ台密の諸伝も本書から推察される。特に台密の法華曼荼羅に関する記述や、本書七二の「法華法日記」などは聖人の思想との関係から注目されるところである。
《『遺文辞典』歴史篇「十羅刹女」「大黒天」の項、『岩波仏教辞典』「阿娑縛抄」の項》