船中問答の弁
船中問答の弁
せんちゅうもんどうのべん
繰り弁の一つ。
祖伝中、富木五郎常忍(つねのぶ・じようにん)が千葉より鎌倉へ向けての船中で、聖人の化導を受ける段である。
富木氏は因幡国(鳥取県)の出身で、下総国(千葉県)の千葉氏の事務官僚となって若宮(中山)に住した。伝承によれば聖人の母梅菊は富木氏の一族という。
その縁で聖人も有形の恩を受けており、この日もお礼のために立ちよると氏は鎌倉に向けて旅立ちのあと。早速追いかけ船中にてあいさつ、この時、氏は諸宗批判のことを出して聖人を叱責した。
これを受けて聖人「衣食の供養を受けた氏のことばではあるが」と前おきをし、法華一乗を説かれるのである。この化導を受けて氏は真言の珠数を切り聖人の信者となる。
富木氏は聖人檀越の中では最も重きを置かれた人であり、『観心本尊鈔』を始め教義に関する書状も多く送られていることから理解力もすぐれていた。
日蓮教団が千葉県において大きな勢力を有することができたのは氏を中心にした曽谷、太田らの檀越の力によるものである、との後の語りもここでは語られる。