妙傳寺聖典個人版 新・電子聖典

涕涙石の弁

ているいせきのべん #3981

涕涙石の弁

ているいせきのべん

繰り弁の一つ。
日蓮聖人幼少時代の史談で、清澄山にて仏道修行中の薬王麿を、母梅菊が訪ねる情景を語った段。
本弁は聖人が善日磨と名乗る頃の、天福元年(一二三三)五月一二日より、清澄山の道善房のもとに師事し、薬王磨と改名して仏道修行に励んでいると、愛着の絆思い切れない母梅菊が訪ねて来る。
しかし女人禁制の山に入ることができず、それを聞いた薬王麿が、師の許しを得て山門にて母に会う。
薬王麿は襟を正し「唯一筋に御の道を尋ねて世を助け、父母をも救い参らせんと心に決めてあるものを、執着の心に誘われて茲に音信給うぞ恨めし、此より後は此の山に麿を訪い給わぬを、深き御慈悲と喜ぶべし」と母を諫める。
梅菊は諭すべき子に諭されて迷いの夢から醒め、わが子の無を祈りながら山を下る。
その梅菊が涙をそそいだ石を涕涙石と名付けるという内容で、親と子の出会いと別れの感情豊かな情景のなかに「棄恩入無為、真実報恩者」の教えに基づく、世俗の倫理を越えた聖人の求道者としての信念を語り、その偉徳を偲ぶ弁である。

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