日蓮(琴曲・宮城道雄・佐野前光詩)
日蓮(琴曲・宮城道雄・佐野前光詩)
にちれん
交声曲。
佐野前光作詞・宮城道雄作曲。
昭和二八年(一九五三)八月一〇日に完成。
日蓮聖人銅像が福岡の東公園に建立されてから五〇周年に当るのを記念し、同協讃会より福岡在住の門人森田定子を通して依嘱され作曲したもの。
作詞した佐野前光は日蓮宗僧侶で福岡県うきは市本仏寺住職。
胎動・黎明・予言・受難・旋風・自覚・静寂の七節に分け、末法濁世に光明をもたらした日蓮聖人の姿を讃歌としてうたいあげている。
この作詞に総譜(スコア)し交声曲様式で構成した宮城道雄の作曲は、男性独唱(立川清登)および混声合唱(東京混声合唱団)を軸に、楽器には箏・一七弦・尺八・胡弓・笙・打楽器を使い合奏形式を採用、これに箏の独奏(宮城喜代子)を活かした声曲としている。
また楽太鼓・羯鼓(かつこ)・鐘・トライアングル等の打楽器を使っている。
日蓮聖人の強くたくましい弘教の響きを高調し、静寂で厳粛な救いの魂を清明・荘厳のしらべにのせて絶唱している。
最も苦心したのは「静寂」の章であったといわれ、この章では南無妙法蓮華経の題目をやや急調に合唱して背景音楽としつつ「父母をとむらう 経声に 鹿も和し啼く 山の庵」と独唱することにより動物の啼く声も山川草木のそよぐ声も谷川の水の流れも、生きとし生けるものが題目を唱える声にふれ包みこまれる日蓮聖人の限りない慈悲を奏でている。
昭和二八年一一月二日、東京神田の共立講堂にて初演奏がなされた。
この時、宮城が作曲の苦心談を語ると演奏者は舞台上で泣いた。
この『日蓮』は交声曲としての代表作であるのみならず数多い作品の中でも畢生の作であり、日蓮聖人讃歌における第一の名曲である。
レコード化は、宮城の一七回忌に当って行われた。
レコード番号はSTL―二一一〇。
箏・名曲の調べ6(B―1・日蓮)。
「東京芸術大学箏曲科用『宮城道雄作曲集・日蓮』」(大日本家庭音楽会発行・昭和二九年一〇月刊)。