辻説法の日蓮と配所の日蓮
辻説法の日蓮と配所の日蓮
つじぜっぽうのにちれんとはいしょのにちれん
村上浪六の書いた伝記風の小説。
『浪六名作選集』大正一五年(一九二六)・講談社刊に所収。
「辻説法の日蓮」は、ののしりや石瓦の投げつけられる中で、虚空に響くがごとくに法華経の題目を唱え、諸宗のあやまちを指弾し、旃陀羅の子の自覚と地涌の菩薩の確信に立って「ただ大覚世尊の真実本懐たる無上一味の法華経に帰せよ」と説き示す金剛のごとき不動の日蓮聖人をとらえている。
「配所の日蓮」は、伊豆および佐渡流罪の地における日蓮聖人が生々世々の仏恩に報じ、心と法とは未来までも死ぬことはないとの確信に立っていた姿を記している。ここでは、流謫された日蓮聖人と日朗上人や船守弥三郎、阿仏房・千日尼ら弟子信徒との信仰的な厚情に比重をおいている。
やや生硬な文体だが、「熱血と情愛」の二面を描いた評伝『日蓮』の一部を集約したもの。