法日尼納骨の事
法日尼納骨の事
ほうにちあまのうこつのこと
繰り弁の一つ。
法日尼というのは、富木常忍の母である。
富木氏は日蓮聖人より六歳の年長であった。
松葉谷焼打ののち、逃れてきた日蓮聖人を請じて、その教導をうけた。
自身入信するのみでなく、上司の太田乗明、曽谷教信をも入信させた。
聖人は富木氏に「当身の大事」という『観心本尊抄』をはじめ、『四信五品鈔』などの重要著作を送っている。
このことは富木氏が聖人のよき理解者であり、教学にも秀でていたことを証するものである。
富木氏は母の法日尼が死去すると、その遺骨を首にかけて身延を訪れ、聖人にご廻向を願った。
その時、持参の経を忘れたので、聖人は引越の時に妻を忘れたり、自分の名を忘れた人もいたが、あなたも日本一のよく忘るる御仁よと、ユーモアまじりに戒めた。
このことに因んで古来、例えば「起ちあがった富木様のお姿は、経帷子の白装束、首にかけたる頭陀袋、そこに母者の骨を入れ、甲掛脚袢の旅姿」といった名調子の弁で説教し、聴者の情感に訴えた。