梵鐘
梵鐘
ぼんしょう
仏教の鐘は一般に梵鐘というが、鯨鐘(げいしよう)、洪鐘、釣鐘、巨鯨、華鯨、撞鐘、大鐘(おおがね)などの名称もある。
起源ははっきりしないが、インドの祇園精舎の無常院に八鐘あったことが伝えられる。
法華経提婆達多品には「椎鐘告四方」とある。
梵鐘は、インドに於ける犍稚と中国で古代から用いられていた鐘とに基づいて造られたもので、本来の用途は四方八方の多勢の人々を呼び集めるための仏具であるが、後代には時刻を報ずるためにも撞くようになった。
わが国に於いて名鐘として名高いものは現存する最古の日本製である京都妙心寺浄金剛院の鐘で、文武天皇二年(六九八)に鋳造されたもの、また銘文で有名な京都神護寺の鐘、音色の良さで知られる播磨尾上神社の鐘、兼好法師の『徒然草』に『鐘は黄鐘調」と音律のことで話題にのぼる大阪四天王寺の鐘など、挙げれば様々である。
日本では青銅の鋳造が多く、まれに鉄鐘をみることがある。
次に鐘を撞く数であるが、すベて、百八点打することが正式であるとされている。
これは百八煩悩を滅すためであるといい、または中国に於ける暦法の十二ヵ月、二十四節、七十二候を合わせて百八の数を得たものであるという説もあるが、一般的には第一の説が流布している。
このような正式の鐘の撞き方を厳格にまもっている禅家の僧堂に於ては、まず軽く鐘を摩すること三下、次にゆるやかに十八下、はやく十八下、合わせて三十六下、これを三回(三通)くり返して百八下とするという。
なお略して十八下し、これをもって百八下にかえる法も行われるという。
従って百八の数を撞くことは、除夜の鐘に限ったことではなく、日々の日課として行われたものであるということである。
なお除夜の鐘について述ぶれば、旧年より撞き始めて、最後の一点を新年に撞き鳴らすことを古法とし、百七点は旧年を送る最後の宣命(せんみよう)、最後の一点は新年を迎える最初の警策であるという説があるが、現今関東の諸宗諸大寺に於ては、ほとんど午前零時の時報から撞き始めるところが多い。
次に時報の鐘であるが、これは晨朝、黄昏などに近隣の人達に時を報ずるために鳴らすのであるが、この場合には江戸時代から行われている時刻の呼称、いわゆる午前四時を七ツ、正午を九ツ、午後六時を六ツ時という数に、捨鐘三下を加えて撞くならわしになっている。
鐘楼の落慶式もしくは新鋳の鐘の撞初式については『宗定法要式』(平成23年改訂再版)一五五頁の入仏式に準じて行えばよろしいが、まず、その準備として鐘楼内もしくは、前庭に祭壇を設け、三具足の飾り及び紅白の餅、酒、菓子、果物などの供物を供え鐘は白布で巻き、除幕できるように工夫して、撞木の力紐は紅白にしておく。
式次第の一例を示せば、(一)開式、(二)灑水散華、(三)道場偈、(四)除幕、(五)勧請、(六)開経偈、(七)読経(略要品其他適宜)、(八)修法、(九)落慶奉告文(もしくは撞初式表白など)、(一〇)撞初(導師、代表等)、(一一)祖訓(修行抄)、(一二)唱題、(一三)回向、(一四)四誓、(一五)奉送、(一六)祝詞、(一七)挨拶、(一八)閉式であろう。
《『広説仏教語大辞典』『岩波仏教辞典』』「梵鐘」の項、『国史大辞典』三巻「鐘」の項》