ぼた餅の弁
ぼた餅の弁
ぼたもちのべん
繰り弁の一つ。
現在、竜口法難会の時つくられ伝承されている「首ツナギのボタ餅」の一節。
文永八年(一二七一)九月一二日、竜口刑場に向う途中、津村という所で一人の老婆が日蓮聖人にボタ餅の供養をささげた。
老婆の夫は宗尊親王の家臣で、進藤左衛門といった。
故あって御勘気を蒙り、越後で亡くなった。
老婆は鎌倉に立ち寄り山の麓に小庵を結び、夫の菩提のため念仏を唱えていた。
ところが老婆が鎌倉へ出かける度に、聖人が辻説法していた。
その教を聴聞しているうち老婆もお題目を唱えるようになった。
老婆は聖人が竜口で処刑されると聞き、有難い聖人へ今生の御暇乞の御供養にと小豆を煮たが、まだ煮えきらぬ間に聖人が路を通られたので、有り合せのごま塩を振りかけた牡丹餅。
形は塩餅なれど心は牡丹餅と御供養された。
聖人は「今未法に法華経の行者を供養する功徳は、百千万億倍に勝れたる御供養。日蓮と聞く者は仇み、見る者は怒る世の中に斯る御供養を受くる御苦心は日蓮生々世々、忘れ申さず。過分に存ずるぞ。志は確かに受け取ったり。やがて帰る時まで、そちに預け置くぞ」といい渡した。
これを「首ツナギのボタ餅」として、講談調に語る弁である。