綾部正清の弁
綾部正清の弁
あやべまさきよのべん
繰り弁の一つ。
祖伝中、伊東朝高の家臣、綾部正清が主人の病気平癒を聖人に懇願する段である。
伊豆伊東の地頭で伊東八郎左衛門尉朝高は強気の人であったが、原因不明の高熱に侵され苦しんでいた。
医者、薬、祈祷の効き目はまるでなかった。
家臣の綾部正清は氏神である熊野権現に丑の刻参りをして主人の病気平癒を祈願した。
三日目、眼前に白髪の老人が現れ「主人の病気は尊き聖僧を苦しめる罪による。
そのお方は伊東より辰巳一里の所に居られる。
そのお方を請し祈願を願え」とのお告げを受けた。
伊東より辰巳一里といえば川奈しかない。
早速出かけて行くと一軒の家に五色の瑞雲がかかっている。「ここだ」と確信し、弥三郎に「日蓮聖人を隠したからとて悪くはしない。
地頭朝高殿の大熱病、それをば御祈祷願うため、わざわざ推参した」と聖人への伝言を頼み入れる。
聖人心よくこれを受けられ、伊東の館へ出掛けて祈願されると七日で全快されたという語りである。
このあと海中出現の立像釈尊を朝高が御布施として差し上げる繰り弁へと続くのである。