お染久松色読販
お染久松色読販
おそめひさまつうきなのよみうり
於染久松色読販とも書く。
歌舞伎脚本。
鶴屋南北作。
お染久松の恋愛談は宝永七年(一七一〇)の歌舞伎狂言「心中鬼門角(しんじゆうきもんかど)」以来浄瑠璃などにもたびたび劇化されたが、本篇はその代表的な一つで文化一〇年(一八一三)三月江戸森田座で初演されたもの。
序幕・中幕・大切の三段構成で、その序幕は柳島妙見堂(東京墨田区法性寺)境内から始まる。
「神木の松の大樹、黒塗りの駒寄せに賽銭箱を懸け、白蛇の絵馬大分上げて有り、後には奉納の幌(のぼり)沢山に建て、能(よき)処に故人桜田の浄瑠璃塚、竹の矢来、山吹の盛り、後に振りよき桜」を背景として茶屋女がせわしく働き、歯磨き売りが居合抜きをしている。
そして「題目太鼓打鳴らし、鰐口の音、御経の聲にて幕明く」のである。
そこに「妙見様へお百度を上る」者、「寺の座敷で精進酒」を飲む者、「白蛇を妙見様で御覧じるとは有難ひ事」という者などが登場して、当時の法性寺での信仰と風俗がよく現れている。
《『国史大辞典』九巻「鶴屋南北」の項》