沓
沓
くつ
法要の中で主に庭儀(ていぎ)に使用する履物で、形は現在の靴に似たものである。
本来は天皇を始め、宮中の文武百官の履物として、古く奈良朝より用いられたもので、種類も多種多様なものがある。
その中で、僧侶が法服の付装として用いるようになったのは、挿鞋(そうかい)と浅沓(あさぐつ)の二種である。
挿鞋は桐の木で型をつくり、その上を繧繝錦(うんげんにしき)で貼り、内張は白綾地(しろあやじ)にしたもので、天皇・皇后など身分の高い人が用いたものであるところから導師、副導師のものとなし、浅沓は桐の木で型をつくり、表は墨漆塗、沓敷は表袴の裂地と同じものを使い、足の甲を痛めないために、込(こめ)という白平絹の布団が付けてあるもので、公卿以下の人達が常に用いたもので、式衆の用いるものとされている。
仏教各宗派の中で、天台、真言、法相、などの奈良、平安の時代に興った宗派では、法要形式、あるいは法服との関連から、現在もよく用いられているが、日蓮宗では、あまり用いていないのが現状である。
そして、日蓮宗の法服規則を見ると、昭和八年(一九三三)六月改正の第三条に「前条法服の副具として払子、檜扇、中啓、雪洞(ぼんぼり)数珠、念珠及び沓を用ゆることを得」という条文があり、次に図表を出して、但書として「直綴(じきとつ)、七条の場合、払子、沓を使用しなくてもかまわない」とあり、昭和四八年九月発行の「日蓮宗宗制」中の法服規程の条文には沓の名はなく、一四八頁の第一表にのみ残されていたが、現行の規定では削除されている。