妙傳寺聖典個人版 新・電子聖典

霑の桜の弁

しずくのさくらのべん #5193

霑の桜の弁

しずくのさくらのべん

繰り弁の一つ。
日蓮聖人身延入山後入門した弟子因幡房日永と聖人との出逢いに因んで生れた伝説を、名調子の弁で語り、聴者の信仰増進に役立てようとした段。
身延山より八(キロ)ほど隔った下山(身延町下山)に地頭下山兵庫光基なる人物がいた。 日永はその一子である。
出家して、各地に諸宗遊学し下山に帰って、名を因幡房と称し、多くの男女を集めて、弥陀信仰を説いたという。 ところが、身延山の日蓮聖人の噂を聞き、ことに念仏無間法門が懸念され、ある夜ひそかに、ご草庵の後にかくれて、聖人の弟子達への義を聞いた。 その論の深奥にふかく心を打たれ、爾来毎夜のように人知れず草庵の後、人目を憚かって立ち聞きを続けた。
ある夜、草庵前の桜の木の下に佇んで聴聞したとき、感動のあまり声を放って泣いた。 それが縁で聖人の弟子となり、聖人より、おん身が両の袂を濡らせてその下に佇んだ桜の木を霑の桜とよぼうといわれ、日永はひたすら感涙にむせんだという。

← 事典トップ