聖日蓮の文学観
聖日蓮の文学観
せいにちれんのぶんがくかん
小泉要智の著書。
明治三九年(一九〇六)八月、東京・須原屋書店刊。
本書の序に小林一郎は「上人は真を説ける人にして美を歌へる人にはあらず。
然れども眞を究めて真の底に美あるを知り、美を究めて美の源に真あるを悟」った人であり、本書はその真美相即の「天籟の貴ぶべきを教ふるもの」と述べているが、高山樗牛を嚆矢とする日蓮遺文の文学性賛美の風潮に呼応した書である。
本論は、仏教文学の潮流・鎌倉文学の概観・日蓮上人の文章・惨風悲雨の六十年・日蓮上人の叙情文学という五章からなり、前後に緒論と結論とを持つ。
力点の置かれているのは「日蓮上人の叙情文学」の章で「主観の影」「感情の姿」である文学と「情の地盤に基礎を築き、主観の園に萠え出たる理想の花」である宗教とは根幹において合致するという立場から、聖人の文章を秋霜烈日の「厳」の面(沖天の意気・奮闘主義・自信と抱負)と春風駘蕩の「愛」の面(温情の流露・母を懐ふの情・門下に対する至誠・四条金吾・慰藉の福音)とに分けて解説鑑賞している。