歎異抄
歎異抄
たんにしょう
一巻。
唯円述。
『正蔵』八三巻所収。
本書は親鸞の滅後に門徒の間に異義の生じたことを歎き、親鸞相承の正義を述べて異義を批判し、他力信仰を勧信したもの。
本文は一八章から成り、前九章に親鸞の法語を出して信心為本の宗義を明かにし、後九章に異義を挙げて批判し、終りに吉水時代の親鸞の信心一異の諍論を記し、源空の信心と親鸞の信心とは同一であるという説話を載せ、門徒の信心を一ならしめんがために本書を撰述したことを述べ、末尾に後鳥羽院の法難にあった一二人の名を記している。
本書の第三章に「善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや」という悪人正機説が説かれ、第五章に父母の孝養のために念仏せずといい、第六章に弟子一人も持たず、といった他力念仏を極限まで徹底した表現が見られ、それらは親鸞が晩年に遭遇した教団の危機と対決し到達した思想的発言として注目されている。
《『親鸞辞典』(東京堂出版)「歎異抄」の項、『大蔵経全解説大事典』「二六六一・歎異抄」の項、『岩波仏教辞典』『仏書解説大辞典』「歎異鈔」の項》