家庭裁判所
家庭裁判所
かていさいばんしょ
昭和二三年(一九四八)法律第二六〇号裁判所法の一部改正により、昭和二四年一月一日から設置された、家事・少年事件を総合的に処理する裁判所で、憲法にいう(憲法第七六条一項)下級裁判所の一つ。
裁判所体系上地方裁判所と同列の地位を有するが、処理権限は家庭と少年に関する事件に限られる。
右の裁判所法の一部改正前は、地方裁判所の支部としての家事審判所が家事事件の審判・調停を行い、行政官庁である少年審判所が少年の保護処分手続を扱っていたが、右の改正によりその両者を裁判所の権限に属させ、裁判所体系上独立の裁判所としての家庭裁判所がその両者を処理するようになった。
現在その所在地と管轄区域は地方裁判所と同一であり、各都道府県を一管轄として設置され、その管轄区域内にそれぞれ支部が設けられている。
家庭裁判所は、一般司法事件を処理する他の裁判所(地方裁判所、簡易裁判所)と異なり、その取扱う事件が家事事件と少年事件であるために、民事の訴訟事件や刑事の訴訟事件のように法律の形式的適用ということにあまり拘泥せず、具体的妥当性を旨とする事案解決を行い、かつケースワーク的機能を重視する点に特徴がある。
そのため事案処理にあたっては、法律の専門家である裁判官のみの判断に委ねることなく、ケースワーカーとしての家庭裁判所調査官にその補佐をなさしめ、また家事審判においては原則として参与員を立合わせ、家事調停においては一般市民である調停委員二人以上を参加させるなどの仕組みをとっている。
一般の民事・刑事の裁判は原則として公開であるのに対し、家庭裁判所の行う家事・少年審判は個人の秘密と可遡性に富む少年の利益を考慮し、すべて非公開としている点も他の裁判所と異なる特徴である。
家庭裁判所の権限は(1)家事審判法で定める家庭に関する事件の審判および調停、(2)少年法に定める少年の保護事件の審判、(3)少年法に定める少年の福祉を害する成人の刑事事件の第一審の裁判、(4)他の法律で特に定める権限に大別される(裁判所法第三一条の三)。
右の家庭に関する事件は、家事審判法第九条一項により甲類と乙類に分類されており、甲類の主なものは、禁治産・準禁治産の宣告その他の処分、失腺の宣告およびその取消、子の氏の変更の許可、未成年を養子とするについての許可、後見人の選任、親権又は管理権の喪失の宣告及びその取消、遺言の検認、遺言の取消等であり、家庭に対する国家の後見的作用として重要な身分行為の許可、認証又は権利義務の付与若しくは剥奪等に関するもので争訟的性格を有しない事項であって、当事者の合意による任意処分ができない。
これに対し乙類の主なものは、夫婦の同居その他夫婦問の協力扶助に関する処分、婚姻費用分担に関する処分、離婚に伴う財産分与に関する処分、親権者の指定又は変更、遺産の分割に関する処分等実体的には当事者の協議により解決することが望ましい事項である。
右のような分類から甲類事項については審判手続による処理しかできないが、乙類事項については調停という話し合いの手続によることが可能であることから、乙類事項を含め一般に人事・家庭に関する紛争はまず家庭裁判所に調停の申立てをしなければらないことになっている(家事審判法第一八条)。
例えば、離婚、離縁、遺産の分割、扶養料の請求等をしようとする場合には、訴えを起す前に家庭裁判所にまず調停の申立てをし、話し合いによる手続を経なければならない(調停前置主義)。
家事調停の実施機関は家庭裁判所であるが、実際に行うのは調停機関としての調停委員会である。
調停委員会は、家事審判官(判事)一人と、弁護士、学者、社会福祉事業家、宗教家等その他多年社会的活動に携わった経験のある徳望良識のある民間人から選ばれた調停委員二人から構成される。
最後に、近時注目を集めつつある家庭裁判所の重要な活動として、家事相談の実施を挙げることができる。
未だ法制化はされていないが、本来宗教者や法律家が行うべき相談活動を家庭裁判所がケースワーカーとしての調査官に担当させて実施していることは注目すべきであろう。