呉音
呉音
ごおん
漢字音の一種で、六-七世紀ごろ、今の江蘇省・浙江省の下流地域、即ち戦国時代の呉の地方に行われていた発音。
大陸文化の伝来と共に、最も早くわが国に伝えられた漢字音と考えられる。
呉音と呼ばれるようになったのは、漢音渡来後に漢音と区別するためで、平安朝中期以後のことらしい。
初めは内典も外典も呉音で読んでいたが、漢音が渡来すると内典は従来どおり呉音で読み、外典は漢音で読むのが通例となった。
しかし、外典の学問も僧徒によって研究伝授されたことが少なくなかったので、『礼記』(らいき)・『文選』(もんぜん)・鄭玄(ぢやうげん)・五行(ごぎやう)などのように、仏典以外でも呉音よみをする習慣のものがかなり多い。
呉音には神(じん→しん)・及(ぎゆう→きゆう)・大(だい→たい)のように漢音に比べて濁音が多いのも特徴。
また呉音でマ行に属する字は万まん→ばん・美み→び・無む→ぶ・廟めう→べう・没もつ→ぼつ、のように漢音ではバ行に変化し、ナ行に属する字は、男なん→だん・尼に→ぢ・奴ぬ→ど・涅ねち→でつ、のようにダ行に変化するものと、人にん→じん・然ねん→ぜん、のようにザ行に変化するものとがある。
《神宮司庁『古事類苑』文学部二七、大島正健『漢音呉音の研究』、戸田浩暁『法華経文法論』、『岩波仏教辞典』「呉音」の項》