妙傳寺聖典個人版 新・電子聖典

話稿本

わこうぼん #4772

話稿本

わこうぼん

古来、説法者は日蓮聖人の伝記や教義などを説述する際、聞法者の感情を動かして随喜させるため、美辞麗句を考え出して、それを抑揚よろしきをえた名調子で語った。
その場合のたね本ともいうべきものを話稿本と称した。
こういう説述を江戸の末期、または明治の初めごろ、繰り弁と名づけるにいたるのであるが、その繰り弁もこの話稿本によったものである。
そして、この話稿本説法者によって珍蔵というかたちで所有され、容易に他見を許さなかった。
つまり苦心して作ったまたは入手した美文麗句調の原稿は、本人特有のものであって、それによって聞法者の随喜の涙を催させるものであるから、めったなことで他人に知られたくないというのが人情であったろう。
凌霄日鶴の著『勧信黄葉譚』(宝暦七年=一七五七)はその代表的なものである。
一部を引用すると「熟熟思ヒ回ラセハ抑モ昿の昔ヨリ、草枕タタ仮初ニ迷ヒ出デテ、幾世ヒサシキ其間、生死ノ街衢(チマタ)ニ起キ臥シモ」云々。

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