熊王丸の弁
熊王丸の弁
くまおうまるのべん
繰り弁の一つ。
祖伝中童子熊王丸が松葉谷の聖人をたずね、子供ながら一信者となり聖人にお給仕を申し出る段である。
伝承によれば、熊王丸は両親の顔さえ知らぬ孤児であった。
小町の辻で人々のかげから聖人の説法を聴き、次第に心ひかれ、ついに意を決して松葉谷の草庵を訪ね「信者の列に加えて下さいとは申しませぬ。
たゞおそば近くでのお給仕をさせて頂きたく存じます」と願い出たのである。
熊王丸のことは聖人も『種種御振舞御書』『波木井殿御書』でふれておられる。
特に聖人竜口の難の時には大切な使者の役をつとめた。
その様子を聖人は『種種御振舞御書』で「中務三郎左衛門ノ尉と申す者の許へ熊王と申す童子を遣したりしかば云々」と述べられている。
後年聖人身延山に入られるや熊王も身辺お世話のためお供した。
今日身延山において年頭に行われる「馬引きの儀」(お頭会)の初めは熊王であったと伝えられているという話もここで語られる。
《『遺文辞典』歴史篇「熊王丸」の項》