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墨譜

ぼくふ #1278

墨譜

ぼくふ

声明の音譜のことで、博士(はかせ)ともいう。
声明の章句の文字一一について、文字の脇に真横、斜上、斜下、真上、真下の五方に分けて線あるいは点を付し、その線がどの方向に向けて書かれているか、また、曲線であるか、直線であるかなどによって施律を表そうとするものである。
こうした音譜の表し方は、Neuma(ネウマ)式記譜法に属するもので、起源は中央アジアであるといわれ、キリストのグレゴリオ聖歌も、古くはこの方式で記譜されていたもので、ヨーロッパの修道院などのごく一部では、現代でも用いているところがあるという。
声明が、中国から伝来して当初においては、字句の音調を示す四声点(平声・上声・去声・入声)と施律を示す博士は、密接な関わりをもったものであったが、時代が下がるに徒って、四声点にとらわれず博士は施律を表すために書かれるようになり、平安末期には、五音(宮・商・角・徴・羽)、七声(宮・商・角・徴・羽・反徴・反宮)を正確に表すことに主眼を置いた記譜法が考案された。
これが五音博士である。
五音博士は、音高を一定の記号で表すもので、天台宗では湛智(一一六三-一二三五)が考案したといわれ、その著『声明用心集』には「三箇の博士図」として、五音博士によって書かれた墨譜を解読する手がかりを示している。
また、真言宗では高野山金剛三味院の僧覚意が、文永七年(一二七〇)に五音博士を考案し、これより以後、真言系各流では五音博士を用いて現在に至っている。
しかし、五音博士は五音を正確に表すことには利点を発揮するが、音と音との間の微妙な塩梅などを表すことができない欠点がある。声明に於ては五音博士では表しきれない、音から音への移動の間につくりだされる微妙な動き(塩梅)が重要な働きをするので、これを表現できる記譜法として、目安博士(博士ともいう)が考案された。
目安博士は天台僧良忍(一〇七二-一一三二)がつくったとされており、天台宗では五音博士はすぐに使われなくなり、目安博士によって記譜したものを用いている。
日蓮宗宗定声明も、目安博士で表されている。

図版

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