布施松翁
布施松翁
ふせしょうおう
(一七二五-八四)
江戸中期の心学者。
名は矩道、また松葉屋伊右衛門と通称した。
一八世紀の初頭、石田梅岩によって創唱された心学、いわゆる石門心学は、その世紀の後半から一九世紀の初めにかけて非常な勢いで全国に普及したが、その伝道手段としての道話にもっとも功績のあった一人。
初め手島堵庵(てじまとあん)について心学を習い、更に堵庵の高弟富岡以直(とみおかもちなお)に従って研鑽を積んだ。
当時、同じく堵庵門下であった中沢道二(なかざわどうに)は江戸にあって高名をとり、松翁は京都にあって京畿地方を遊説し人に知られ、しばしば二人は対比される。
有名な『松翁道話』全三巻は、彼の道話を聞書きの形で板行したもので、老荘的思想傾向をその特徴としたが、時により法華宗の題目までも自説の講釈に援用するなど、心学の極意をいかに民衆に平易に説くかという点にもっぱら意が用いられている。
《『国史大辞典』一二巻「布施松翁」の項》