食物三徳御書
書下し
食物三徳御書
[1](前欠)たからとす。魚は水ををやとし、馬は木を家とす。人は食をたからとす。かるがゆへに大国の王は民ををやとし、民は食を天とすとかかれたり。
[2]食には三つの徳あり。一には命をつぎ、二にはいろ(色)をまし、三には力をそう。人に物をほどこせば我が身のたすけとなる。譬へば、人のために火をともせば、我がまへあきらかなるがごとし。
[3]悪をつくるものをやしなへば命をますゆへに気ながし。色をますゆへに眼にひかりあり。力をますゆへに、あし(足)はやく、て(手)きく。かるがゆへに食をあたへたる人、かへりていろもなく、気もゆわ(弱)く、力もなきほう(報)をうるなり。
[4]一切経と申すは紙の上に文字をのせたり。譬へば虚空に星月のつらなり、大地に草木の生ぜるがごとし。この文字は釈迦如来の気にも候ふなり。気と申すは生気なり。この生気に二あり。一には九界(後欠)
現代語訳
食物三徳御書
弘安元年(一二七八)五七歳、於身延、和文、定一六〇七—一六〇八頁。
[1](前欠)宝とします。魚は水を親と崇め、馬は木を家と頼り、人は食物を宝と貴びます。それと同じようにある書物には、大国の王は人民を親と崇め、人民は食物を天と貴ぶと書かれています。
[2]食物に三つの効用があります。一には生命力を養い、二には色艶を増し、三には体力をつけます。そして他人に物を施せば、それが自分の利徳として返ってきます。たとえば、他人のために灯火をともせば、自分の前も明るくなるようなものです。ですから貴殿のなさった食物のご供養は、とても尊いことです。
[3]ただし、悪人に食物を施してはいけません。それをすると、その悪人が生命力を養って生気が充満します。色艶を増すので怪しい眼光が爛爛と輝きます。体力をつけて足が速くなり手が利くようになり、悪事に熟達します。こういう極悪人を養成することになるので、食物を与えた人がかえって色艶もなく、生気も弱り、体力もなくなるという報いを受けてしまうのです。
[4]一切経というのは紙の上に文字を記載してあるものです。たとえば大空に星や月が散在し、大地に草木が生えているようなものです。一切経の文字は釈迦如来の気でもあります。気というのは生気です。この生気に二種があります。一つには九界(後欠)