妙傳寺聖典個人版 新・電子聖典

芋一駄御書

全集 第7巻 2段 定本: #20304(定本の該当ページへ)

書下し

芋一駄御書いもいちだごしよ


[1]いも一駄・はじかみ五十ぱ(把)をくりたびて候ふ。
[2]このみのぶのやまと申し候ふは、にし(西)はしらねのたけ(嶽)、つねにゆき(雪)をみる。ひんがし(東)にはてんしのたけ、つねにひ(日)をみる。きたはみのぶのたけ、みなみはたかとりのたけ、四山のあひ(間)はこ(箱)のそこのごとし。いぬゐ(戌亥)のすみよりかは(河)はながれて、たつみ(辰巳)のすみにむかう。かかるいみじきところ、みね(峯)にはせび()のこへ、たに(谷)にはさる(猿)のさけび、木はあしのごとし、くさはあめににたり。しかれどもかかるいもはみへ候はず。はじかみはをひず。いし(石)ににて少しまもりやわらかなり。くさ(草)ににてくさよりもあぢあり。
[3]法華経に申しあげ候ひぬれば、御心ざしはさだめて釈仏しろしめしぬらん。恐恐謹言。
[4]<日>八月十四日
[5]<人>日 蓮<花押>花押
[6]<先>御返事
現代語訳

芋一駄御書


弘安元年(一二七八)あるいは建治三年(一二七七)八月一四日、五七歳あるいは五六歳、於身延、和文、定一五五〇頁。

[1]芋一駄ならびに生薑しようが五十把をお送りいただきました。お礼申し上げます。
[2]この身延山中の庵室あんじつのある所は、西は白根の嶽がそびえて、常に雪をいただいているのが見えます。東には天子の嶽が望めて、いつも太陽がのぼるのを拝めます。北は身延の嶽が眼前にせまり、南には鷹取の嶽がそば立っています。その四つの山に囲まれた、箱の底のような所です。西北の奥の方から流れてくる河は東南の彼方に向かって行きます。そういう凄まじい所で、峰にはがやかましく鳴き、谷には猿のけたたましい叫び声が響き、木は葦のように林立し、草は雨のようにすきまなく生えています。それなのに、今日いただいたような芋は見当たりませんし、生薑も生えていません。芋は石のようですが、少し見た目が柔らかです。生薑は雑草のようですが草よりも味があります。
[3]法華経の御前にご報告申し上げましたので、貴殿の尊いお志は釈仏がご存知になっていらっしゃるでしょう。恐恐謹言。
[4]<日>八月十四日
[5]<人>日 蓮 <花押>花押
[6]<先>御返事