妙傳寺聖典個人版 新・電子聖典

大尼御前御返事

全集 第7巻 2段 定本: #20382(定本の該当ページへ)

書下し

大尼御前御返事おおあまごぜんごへんじ


[1](前欠)ごくそつ(獄卒)えんま(閻魔)王のたけは十丁ばかり、面はす(朱)をさし、眼は日月のごとく、歯はまんぐわのねのやうに、くぶしは大石のごとく、大地は舟を海にうかべたるやうにうごき、声はらい(雷)のごとく、はたはたとなりわたらむには、よも南無妙法蓮華経とはをほせ候はじ。
[2]日蓮が弟子にはをはせず。よくよく内をしたためてをほせをかほり候はん。なづき(頭脳)をわり、み(身)をせめていのりてみ候はん。たださきのいのりとをぼしめせ。これより後はのちの事をよくよく御かため候へ。恐恐謹言。
[3]<日>九月二十日
[4]<人>日 蓮<花押>花押
[5]<先>大尼御前御返事
現代語訳

大尼御前御返事


弘安三年(一二八〇)九月二〇日、五九歳、於身延、和文、定一七九五—一七九六頁。

[1](前欠)地獄の使いや閻魔王の身長は十丁ほどあり、顔は朱色で、目は日月のように輝き、歯はマンガンの原鋼のように堅く、こぶしは大石のように強く、歩けば大地は海に浮かんだ船のように揺れ動き、怒号どごうは雷のようにゴロゴロと響き渡るのですが、そういう恐ろしい地獄に落ちて責苦を受けたとしたら、その時、まさかあなたは、そこで南無妙法蓮華経と唱えて救われようとはなさらないでしょうね。
[2]あなたは、そのように法華経の信仰に徹していないし、しかも私の弟子でおいでになるわけでもありません。それなのに、このたび私に祈を依頼していらっしゃったことには不審が残りますので、よくよく心の内をたしかめてから、ご依頼に応じるかどうかを決めましょう。もし、お引き受けすることになったとすれば、その時は、脳みそをとり出して護摩ごまき、身を犠牲にしてお祈りしてみましょう。しかし、それもただ後生安楽のための祈とお思いください。今後は、現世でのことはあまりお考えにならず、来世で霊山りようぜん浄土に住むことができるような功徳をよくよくお積みください。恐恐謹言。
[3]<日>九月二十日
[4]<人>日 蓮 <花押>花押
[5]<先>大尼御前御返事