妙心尼御前御返事
書下し
妙心尼御前御返事
[1]すずの御志送り給び候ふ了んぬ。
[2]をさなき人の御ために御まほり(守)さづけまいらせ候ふ。この御まほりは、法華経のうちのかんじん、一切経のげんもく(眼目)にて候ふ。たとへば、天には日月、地には大王、人には心、たからの中には如意宝珠のたま、いえにははしらのやうなる事にて候ふ。このまんだら(曼荼羅)を身にたもちぬれば、王を武士のまほるがごとく、子ををやのあいするがごとく、いを(魚)の水をたのむがごとく、草木のあめをねがうがごとく、とりの木をたのむがごとく、一切の仏神等のあつまりまほり、昼夜にかげのごとくまほらせ給ふ法にて候ふ。よくよく御信用あるべし。あなかしこ、あなかしこ。恐恐謹言。
[3]<日>八月二十五日日>
[4]<人>日 蓮<花押>花押花押>人>
[5]<先>妙心尼御前御返事先>
現代語訳
妙心尼御前御返事
建治元年(一二七五)八月二五日、五四歳、於身延、和文、定一一〇五頁。
[1]種々のご芳志の品をお送りいただきました。お礼申し上げます。
[2]幼いお子さんのためにお守りの曼荼羅をお授けします。このお守りは、法華経の中の肝心であり、一切経の眼目に当たる重要なものです。たとえば、天にあっては日月、地上では大王、人にとっては心、宝物の中では如意宝珠の玉、家でいえば柱のように大切なものです。この曼荼羅を身につけていれば、王を武士が守護するように、子を親が愛育するように、魚が水を頼りとして住むように、草木が雨の降りそそぐのを待つように、鳥が木をやすらかなねぐらとするように、一切の仏神らが集まって見守り、昼夜の別なく影のように付き添って守護してくださる定めになっているのです。心から信頼してご信仰なさるように。あなかしこ、あなかしこ。恐恐謹言。
[3]<日>八月二十五日日>
[4]<人>日 蓮 <花押>花押花押>人>
[5]<先>妙心尼御前御返事先>