妙傳寺聖典個人版 新・電子聖典

上野殿御返事

全集 第7巻 2段 定本: #20377(定本の該当ページへ)

書下し

上野殿御返事うえのどのごへんじ


[1](前欠)女子は門をひらく、男子は家をつぐ。日本国を知りても子なくば誰にかつがすべき。財を大千にみてても子なくば誰にかゆづるべき。されば外典*げてん三千余巻には子ある人を長者といふ。内典*ないてん五千余巻には子なき人を人といふ。
[2]女子一人、男子一人、たとへば天には日月のごとし。地には東西にかたどれり。鳥の二つのはね、車の二つのわ(輪)なり。さればこの男子をば日若御前ひわかごぜと申させ給へ。くはしくはまたまた申すべし。
[3]<日>八月二十六日
[4]<人>日 蓮<花押>花押
[5]<先>上野殿御返事
現代語訳

上野殿御返事


弘安三年(一二八〇)二月一六日、五九歳、於身延、和文、定一七九一頁。

[1](前欠)女性は嫁いで家門を広くします。男性は家を相続して絶えないようにします。日本国を統治する身になっても、子がいなければその地位を誰に継がせることができましょうか。財産を全世界に満たすほどに蓄えても、子がいなければその財産を誰に譲ることができましょうか。ですから、儒教の三千余巻の書物には、子のある者を長者というといっています。また仏教の五千余巻の書物には、子のない者を人というといっています。
[2]貴殿は女の子一人きりでしたが、このたび男の子が生まれて、男女二人になりました。天に日と月が並び輝くようで将来が明るくなりました。地に東西が定まっているように安心して生活できます。鳥に二つの羽があり、車に二つの輪があるように目的に向かって邁進できます。そのような意味を込めて、この男の子を日若御前と命名なさいませ。委細はまたお便りいたします。
[3]<日>八月二十六日
[4]<人>日 蓮 <花押>花押
[5]<先>上野殿御返事