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伯耆公御房御消息

全集 第5巻 2段 定本: #20428(定本の該当ページへ)

書下し

伯耆公御房消息ほうきこうごぼうしようそく


[1]〔御布施御馬一疋鹿毛、御見参に入らしめ候了ぬ〕。兼て又此御経は廿八字、法華経の七の巻薬王品の文にて候。しかるに聖人の御乳母のひとゝせ(一年)御所労御大事にならせ給い候て、やがて死なせ給いて候し時、この経文をあそばし候て、浄水をもつてまいらせさせ給いて候しかば、時をかへずいきかへらせ給いて候経文也。んでうの七郎次郎時光は、身はちいさきものなれども、日蓮に御こゝろざしふかきもの也。たとい定業じようごうなりとも、今度ばかりえんまわう(閻魔王)たすけさせ給へと御せいぐわん候。明日寅卯辰の刻に、しやうじがは(精進河)の水とりよせさせ給い候て、このきやうもん(経文)をはい(灰)にやきて、水一合に入れてまいらせ候てまいらせさせ給ふべく候。恐々謹言。
[2]<日>二月廿五日
[3]<人>日 朗<花押>花押
[4]<先>謹上 わき公御房
現代語訳

伯耆公御房消息


弘安五年(一二八二)二月二五日、六一歳、於身延、伯耆公宛、和文、定一九〇九—一九一〇頁。

[1]南条時光殿から頂戴した鹿毛の馬一疋を、日蓮聖人にお見せしました。また、「法華経はこの娑婆世界の人びとの病をいやす良薬である。もし人が病気になったとき、この経を聞くことができれば、病気はたちまち消滅するのみならず不老不死となろう」の二十八字は、法華経第七巻の薬王品第二十三の経文です。しかるに、日蓮聖人の御乳母がこの一年ばかり病気が重く、やがてなくなられたとき、この薬王品の不老不死の経文を読み、清浄な水をもって口に入れましたところ、たちまちによみがえられた経文です。南条七郎次郎時光殿は、身分は低い者ですが日蓮聖人への御帰依深き者です。それゆえ、たとえ前世から定まっている業因とはいえ、今度ばかりは閻魔王助けたまえと御誓願されるとよいでしょう。病気平の方法として、明日の午前四時から八時までの間に精進河の清水を取り寄せて、この薬王品の不老不死の経文を焼いて灰にし、水一合に入れて差上げていただきたいと存じます。恐々謹言。
[2]<日>二月二十五日
[3]<人>日 朗 <花押>花押
[4]<先>謹んで伯耆公日興御房に上る