波木井殿御報
433 波木井殿御報
畏申候。みちのほど(道程)べち(別)事候はで、いけがみ(池上)までつきて候。みちの間、山と申、かわ(河)と申、そこばく大事にて候けるを、きうだち(公達)にす(守)護せられまいらせ候て、難もなくこれまでつきて候事、をそれ入候ながら悦存候。
さてはやがてかへりまいり候はんずる道にて候へども、所らう(労)のみ(身)にて候へば、不ぢやう(定)なる事も候はんずらん。さりながらも日本国にそこばくもてあつかうて候みを、九年まで御きえ候ぬる御心ざし申ばかりなく候へば、いづくにて死候とも、はか(墓)をばみのぶさわ(沢)にせさせ候べく候。
又くりかげの御馬はあまりをもしろくをぼへ候程に、いつまでもうしなふまじく候。ひたち(常陸)のゆ(湯)へひかせ候はんと思候が、もし人にもぞとられ候はん。又そのほかいたはしくをぼへば、ゆ(湯)よりかへり候はんほど、かづさ(上総)のもばら殿もとにあづけをきたてまつるべく候に、しらぬとねり(舎人)をつけて候てはをぼつかなくをぼへ候。まかりかへり候はんまで、此とねりをつけをき候はんとぞんじ候。そのやうを御ぞんぢのために申候。恐々謹言。 九月十九日 日蓮 進上 波木井殿 [御侍] 所らうのあひだ、はんぎやうをくはへず候事、恐入候。