妙傳寺聖典個人版 新・電子聖典

上野殿御返事

第二巻 定本番号 20314 弘安1(1278) 分類: 真蹟断片現存

祖寿: 57 著作地: 身延 写本: 日興筆富士大石寺蔵

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    314   上野殿御返事
いゑのいも一駄、かうじ(柑子)一こ(篭)、ぜに六百のかわり御ざのむしろ十枚給了。去今年は大えき(疫)此の国にをこりて、人の死事大風に木のたうれ、大雪に草のおるゝがごとし。一人ものこるべしともみへず候き。しかれども又今年の寒温、時にしたがひて、五穀は田畠にみち、草木はやさん(野山)におひふさがりて尭舜の代のごとく、成劫のはじめかとみへて候しほどに、八月、九月の大雨大風に日本一同に不熟、ゆきてのこれる万民冬をすごしがたし。去寛喜・正嘉にもこえ、来らん三災にもおとらざるか。自界叛逆して盗賊国に充満、他界きそいて合戦に心をつひやす。民の心不孝にして父母を見事他人のごとく、僧尼は邪見にして狗犬と猴とのあへるがごとし。慈悲なければ天も此国をまほらず、邪見なれば三宝にもすてられたり。又、疫病もしばらくはやみてみえしかども、鬼神かへり入かのゆへに、北国も、東国も、西国も、南国も、一同にやみなげ(病歎)くよしきこへ候。かゝるよにいかなる宿善にか、法華経の行者をやしなわせ給事、ありがたく候ありがたく候。事々見参の時申べし。恐々謹言。   後十月十三日   日蓮  [花押]   上野殿 [御返事]