妙傳寺聖典個人版 新・電子聖典

種種物御消息

第二巻 定本番号 20299 弘安1(1278) 分類: 真蹟断片現存

祖寿: 57 著作地: 身延 真蹟: 岩本 実相寺 外二ヶ所 

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    299   種種物御消息
みなみなのものをくり給て法華経にまいらせて候。抑日本国の人を皆やしないて候よりも、父母一人やしないて候は功徳まさり候。日本国の皆人をころして候は七大地獄に堕候。父母をころせる人は第八の無間地獄と申地獄に堕候。人ありて父母をころし、釈迦仏の御身よりち(血)をいだして候人は、父母をころすつみ(罪)にては無間地獄に堕ちず、仏の御身よりちをいだすつみにて無間地獄に堕候也。又十悪・五逆をつくり、十方三世の仏の身よりちをいだせる人の法華経の御かたきとなれるは、十悪・五逆、十方の仏の御身よりちをいだせるつみにては阿鼻地獄へは入事なし。ただ法華経不信の大罪によりて無間地獄へは堕候也。又十悪五逆を日々につくり十方の諸仏を月々にはう(謗)ずる人と、十悪五逆を日々につくらず十方の諸仏を月々にはうぜず候人、此二人は善悪はるかにかわりて候へども、法華経を一字一点もあひそむきぬれば、かならずおなじやうに無間地獄へ入候也。しかればいまの代の海人山人日々に魚鹿等をころし、源家平家等の兵士等のとしどしに合戦をなす人々は、父母をころさねばよも無間地獄には入候はじ。便宜候はば法華経を信じて、たまたま仏になる人も候らん。
今の天台座主・東寺・御室・七大寺検校・園城寺の長吏等の真言師並禅宗・念仏者・律宗等は、眼前には法華経を信じよむににたれども、其根本をたづぬれば弘法大師・慈覚大師・智証大師・善導・法然等弟子也。源にごりぬれば流きよからず。天くもれば地くらし。父母謀反をおこせば妻子ほろぶ。山くづるれば草木たふるならひなれば、日本六十六ケ国の比丘比丘尼等の善人等皆無間地獄に堕べき也。されば今の代に地獄に堕ものは悪人よりも善人、善人よりも僧尼、僧尼よりも持戒にて智慧かしこき人々の阿鼻地獄へは堕候也。
此法門は当世日本国に一人もしり(知)て候人なし。ただ日蓮一人計にて候へば、此を知て申さずば日蓮無間地獄に堕てうかぶご(期)なかるべし。譬へばむほんの物をしりながら国主へ申さぬとが(失)あり。申せばかたき雨のごとし風のごとし。むほんのもののごとし。海賊山賊のもののごとし。かたがたしのびがたき事也。例せば威音王仏の末の不軽菩薩のごとし。歓喜仏のすえの覚徳比丘のごとし。天台のごとし。伝教のごとし。又かの人々よりもかたきすぎたり。かの人々は諸人ににくまれたりしかどもいまだ国主にはあだまれず。これは諸人よりは国主にあだまるる事父母のかたきよりもすぎたるをみよ。
かゝるふしぎの者をふびんとて御くやう候は、日蓮が過去の父母歟。又先世の宿習歟。おぼろげの事にはあらじ。其上雨ふり、かぜふき、人のせい(制)するにこそ心ざしはあらわれ候へ。此も又かくのごとし。ただなる時だにも、するが(駿河)とかい(甲斐)とのさかいは山たかく、河はふかく、石をゝく、みちせばし。いわうやたうじ(当時)はあめはしの(篠)をたてゝ三月にをよび、かわゝまさりて九十日。やまくづれ、みちふさがり、人もかよはず、かつて(糧)もたへて、いのちかうにて候つるに、このすゞの物たまわりて法華経の御こへ(声)をもつぎ、釈迦仏の御いのちをもたすけまいらせさせ給ぬる御功徳、たゞをしはからせ給べし。くはしくは又々申べし。恐々。   七月七日  日蓮 [花押]   御返事