御衣並単衣御書
195 御衣並単衣御書
御衣布、並御単衣給候了。 鮮白比丘尼と申せし人は、生させ給て御衣をたてまつりたりけり。生長するほどに次第にこの衣大になりけり。後に尼とならせ給ければ法衣となりにけり。ついに法華経の座にして記別をさづかる。一切衆生喜見如来これなり。
又法華経説人は、柔和忍辱衣と申て必衣あるべし。物たねと申もの、一なれどもうえぬれば多となり、龍は小水を多雨となし、人は小火を大火となす。衣かたびらは一なれども、法華経にまいらせさせ給ぬれば、法華経の文字は六万九千三百八十四字、一字は一仏なり。此仏は再生敗種を心腑とし、顕本遠寿其寿とし、常住仏性を咽喉とし、一乗妙行を眼目とせる仏なり。応化非真仏と申て、三十二相・八十種好の仏よりも、法華経の文字こそ真の仏にてはわたらせ給候へ。仏在世に仏を信ぜし人は仏にならざる人もあり。仏滅後に法華経を信ずる人は無一不成仏如来の金言なり。
この衣をつくりて、かたびらをきそい(著添)て、法華経をよみて候わば、日蓮は無戒の比丘なり、法華経は正直の金言なり。毒蛇の珠をはき、伊蘭の栴檀をいだすがごとし。恐々謹言。 九月二十八日 日蓮 [花押] 御返事