土木殿御返事
書下し
土木殿御返事
[1](前欠)仕り候なり。褒美にあらず、実に器量者なり。来年正月、大進阿闍梨と越中にこれを遣わし去るべし。白小袖一つ給び候い了んぬ。今年日本国一同に飢渇の上、佐渡の国には七月七日已下、天より忽ちに石灰虫と申す虫雨下し、一時に稲穀損失し了んぬ。その上、疫々処々に遍満し、方々死難脱れ難きか。事事紙上にこれを尽し難し。恐恐謹言。
[2]<日>十一月三日日>
[3]<人>日 蓮<花押>花押花押>人>
[4]<先>土木殿御返事先>
現代語訳
土木殿御返事
文永一〇年(一二七三)一一月三日、五二歳、於佐渡一谷、原漢文、定七五四頁。
[1](前欠)…いたしました。別に褒めるわけではありませんが、まことに才能の優れ、資質のある人です。来年の正月には、大進阿闍梨とともに、この人(富木常忍の義子である伊予房か)を越中の国へ行かせるつもりです。ところで、白小袖一枚ご供養いただき、ありがたく拝受いたしました。今年は日本国は一同に飢饉に見舞われておりますが、佐渡の国では七月七日以来、天から突然、石灰虫という害虫が雨のように降ってきたために、たちまち稲や穀物を損失してしまいました。そのうえ疫病もいたるところに蔓延して、多くの人々は横死の災難から逃れられないでありましょう。いろいろと申し上げたいこともありますが、紙上ではとうてい尽くせません。つつしんで申し上げます。
[2]<日>十一月三日日>
[3]<人>日 蓮 <花押>花押花押>人>
[4]<先>土木殿御返事先>