妙傳寺聖典個人版 新・電子聖典

御輿振御書

全集 第5巻 2段 定本: #64(定本の該当ページへ)

書下し

御輿振御書みこしぶりごしよ


[1]御文並に御輿振みこしぶりの日記たび候ぬ。悦び入て候。中堂炎上の事、その義に候か。山門破滅の期、その節に候か。此等もその故無きにあらず。天竺には園精舎ぎおんしようじや頭摩寺けいずまじ、漢土には天台山、正像二千年の内に以て滅尽せり。今末法に当て日本国計りに叡山*えいざんあり。三千界の中にただこの処のみあるか。定めて悪魔一跡にねたみを留むるか。小乗・権教の輩もこれをねたむか。随て禅僧・律僧・念仏者王臣にこれを訴えられ、三千人の大衆は我が山破滅の根源とも知らず、師檀共に破国・破仏の因縁に迷えり。ただたのむ所は妙法蓮華経第七の巻の「後の五百歳閻浮提えんぶだいに於て広宣流布せん」の文か。又伝教大師*でんぎようだいしの「正像やや過ぎおわつて末法はなはだ近きにあり、法華一乗の機、今正しく是れ其の時なり」の釈なり。滅するは生ぜんがため、下るは登らんがためなり。山門繁昌のため、かくのごとき留難るなんを起すか。事々ことごと紙面に尽しがたし。早々見参を期す。謹言。
[2]<日>三月一日
[3]<人>日 蓮<花押>花押
[4]<先>御返事
現代語訳

御輿振御書


文永六年(一二六九)三月一日、四八歳、三位房宛、原漢文、定四三七—四三八頁。

[1]お手紙ならびに御輿振の日記をいただき、嬉しく思います。お手紙の趣旨は比叡山の根本中堂災上のことと思いますが、これは比叡山延暦寺滅亡の時節を示すものでありましょう。延暦寺がこのようになるのも理由があってのことです。インドでは園精舎・鷄頭摩寺、中国では天台山が仏教の中心として法を弘めてきましたが、それはいずれも正法・像法時代の二千年の間で、今は滅尽してしまいました。今、時代は末法に入り、この日本国の比叡山延暦寺のみが、法華経弘通の根本道場として、この広い世界の中に存在しています。しかし、これを喜ばない悪魔のような者がまたこの延暦寺に留まっています。また、小乗や権教に執着する人びともこれを嫉んでいます。したがって、禅僧・律僧・念仏者たちは、何かと延暦寺のことを朝廷に訴えています。しかし、延暦寺の三千人の大衆は、延暦寺が破滅する根源とも知らず、さらに延暦寺も朝廷も仏法が滅亡し、国が滅亡するほんとうの理由がわかっていません。このことをみるにつけ、頼みとするのは法華経第七巻の薬王菩本事品に示された「末法の初めに法華経を広宣流布する」の経文で、伝教大師最澄もその著、守護国界章で「正法・像法の時代も過ぎて、今まさに末法の時代に近づこうとしている。そしてその時は法華一乗の教えが弘まる時である」と釈しています。今はその末法の時代で、滅びるのは生まれるため、下るのは登るためで、延暦寺が繁栄するためにこのような大難が起こるのでしょうか。お話ししたいことはたくさんありますが、紙面に書き尽くすことができません。早くお目にかかりたいと思います。
[2]<日>三月一日
[3]<人>日 蓮 <花押>花押
[4]<先>御返事