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八大地獄鈔

第三巻 定本番号 3 建長6(1254) 分類: その他

祖寿: 33 著作地: 遊学中 

    7   八大地獄鈔
六道者  一地獄道 二餓鬼道 三畜生道 四修羅道 五人道 六天道  始三名三悪道後三名三善道合六道也
八大地獄者
一等活地獄、閻浮提地下一千由旬にあり、四万里也。等活地獄より大焦熱地獄まで七地獄、縦広一万由旬也、四十万里也。無間地獄縦広八万由旬也、三百三十六万里也。
二黒縄地獄 等活地獄の下にあり。
三衆合地獄 黒縄地獄の下にあり。
四叫喚地獄 衆合地獄の下にあり。
五大叫喚地獄 叫喚地獄の下にあり。
六焦熱地獄 大叫喚地獄の下にあり。
七大焦熱地獄 焦熱地獄の下にあり。
八阿鼻地獄 大焦熱地獄の下にあり如箭射早落一千歳落付云云。
已上八大地獄に各十六別処あり。小地獄也 合して一百三十六の地獄なり。是をば正地獄と云。此外に傍地獄と云て山中、海辺にも地獄多くありとかや。取集れば都合八万四千の地獄ありと云云。此地獄の苦患を一分なりとも委く説ば、聞ん者血を吐て死すべしと説れぬれば、委くは申しがたし。大海の一滴が程を申し侍るべし。昔毛血法師と云し人は必一日に一度衣を洗ひ給ひしを、御弟子等あやしみて其故を問奉りしかば、六通の中宿命通を得つれば過去の事を知。是故に我宿命通を得て過去の事を思へば、地獄に堕て苦を受し事を思出すに、紅の血身より出で衣を染る故に、賤き物なれども血の染けがらはしければ洗ふなりとぞ答へ給ひける。只思出すだにもかくこそ候ひけれ。仏の聞ん者血を吐て死なんと説給ひけるも理りなりけり。
初に等活地獄者、此大地の下一千由旬にあり、縦広一万由旬なり。寿は人間の五十年を以て四王天の一日一夜として、其寿五百歳なり。四王天の五百歳の寿を以て此地獄の一日一夜として、其寿五百歳なり。この地獄の罪人互に常に害心を懐く。若適にも相見る事あれば、猟者の鹿に値が如し。各鉄の爪を以て互に裂。血肉既に尽て唯残骨のみあり。或は獄卒手に鉄の杖、鉄の棒をとりて、頭より足に至てく皆打築に、身体破砕ること猶し沙の如し。或は極て利刀を以て分分に肉をさく事、厨者の魚肉を屠るが如し。涼風来て吹ば尋で活ることもとの如し。殺生の者此地獄におつ云云。
二黒縄地獄者等活地獄の下にあり。人間の百歳を以て利天の一日一夜として、其寿一千歳なり。利天の一千歳の寿を以て此地獄の一日一夜として、其寿一千歳なり。此地獄には熱鉄の斧を以て罪人をさく。又刀を以て屠て百千段となして処処に散在せり。楚毒極りなし云云。等活地獄及び十六の別処の一切の諸苦を十倍して重く受るなり。殺生の上に偸盗の者此地獄におつ。又弓を引、箭をはげて是を射ることあり。
三衆合地獄者黒縄地獄の下にあり。此地獄には多く鉄山あり、両の山相対へり。牛頭・馬頭等の諸の獄卒、手に器杖を執て罪人を駈出して、山間に入しむ。是時両の山迫来て合せおすに、身体折砕け、血流れて地にみつ。或は鉄山あり、空よりしておつ。罪人をうつに砕ること沙の如し。或は石の上に置て磐石を以て押之。或は鉄の臼にいれて鉄の杵を以てつく。獄卒並に熱鉄の師子・虎・狼等の諸の獣、烏鷲等諸鳥競来て食す。又婦女樹に登り、罪人を悩す事あり。人間の二百歳を以て夜摩天の一日一夜として、其寿二千歳なり。夜摩天の二千歳の寿を以て此地獄の一日一夜として、其寿二千歳なり。殺生偸盗の上に邪婬のもの此地獄におつ。又火焔口より入て五臓六腑をやく云云。
四叫喚地獄者衆合地獄の下にあり。人間の四百歳の寿を以て都率天の一日一夜として、其寿四千歳なり。都率天の四千歳の寿を以て此地獄の一日一夜として、其寿四千歳なり。殺生・偸盗・邪婬・飲酒の者此地獄におつ。又一の地獄あり、火末虫と名く。昔し酒をうるに水を加る者此中におつ。又身より虫生じて其皮肉骨髄を破りて飲食ふ。猛火満ること厚さ二百里なり。罪人をとらへて火の中に行しむれば、足より頭に至るまで一切洋消。これを挙れば還て生ず云云。
五大叫喚地獄者叫喚地獄の下にあり。前の四の地獄及び十六の別処の諸の苦患を十倍して重く受也。人間の八百歳を以て化楽天の一日一夜として、其寿八千歳なり。化楽天の八千歳を以て此地獄の一日一夜として、其寿八千歳なり。殺・盗・婬・酒の上に妄語の者此地獄におつ。獄卒罪人を呵責して偈を説て云く、妄語第一火尚能焼大海。況焼妄語人如焼草木薪云云。此地獄熱鉄の利針にて口舌倶に刺。獄卒熱鉄の鉗を以て其舌を抜出す。眼を抜ことも亦然り。復刀を以て其身を削る。甚薄の利こと剃頭刀の如し云云。
六焦熱地獄者大叫喚地獄の下にあり。獄卒罪人をとらへて熱鉄の地の上にふせ、或はあふのけ、或はうつぶけ、頭より足に至るまで、大熱鉄の棒を以て或はうち、或はついて、肉搏の如くならしむ。或は大なる鉄の串を以て、下よりこれを貫て頭に徹し、反覆してこれを炙る。或は熱きに入、或は鉄の楼にをく。鉄火猛く盛にして骨髄を徹す。若此地獄の豆計の火を以て閻浮提にをきなば、一時に焚尽なん。況や罪人の身をや。長時に焚焼す。豈可忍哉。此地獄の罪人前の五地獄の火をのぞみ見れば猶霜雪の如し。人間の一千六百歳を以て佗化天の一日一夜として、其寿一万六千歳なり。佗化天の一万六千歳の寿を以て一日一夜として、此地獄の寿一万六千歳なり。殺・盗・婬・飲酒・妄語の上に邪見の者此地獄におつ。道の上に坑あり、中に熾なる火みてり。罪人入已れば、一切身分皆悉く焼尽ぬ。焼已て復生じ、生じ已て復焼。炎盛なること高さ五百由旬なり。復火に焼死て復活かへる、異刀の風生て、身を砕こと沙の如く、分散十方。散じ已て復生ず、生じ已て復散ず。一切の諸法に常と無常とあり。無常とは身なり、常とは四大なり。
七大焦熱地獄者焦熱地獄の下にあり苦の相上に同じ。但前の六の地獄の根本と別処との一切の諸苦を十倍して、重く受るなり。具に説べからず。其寿半中劫なり。殺・盗・婬・飲酒・妄語・邪見の上に、浄戒の尼をけがせる者此地獄におつ。落る程十億由旬なり。閻羅人ありて面に悪状あり。手足極めて熱く、身を捩し肱を怒す。罪人これを見て、極めて大に忙怖。其声雷の吼る如し。罪人これを聞て恐れ怖こと更に増。其手に利刀を執。復肚甚大にして黒雲の色の如し。眼の光炬の如し。鉤る牙鋒の如し。臀も手も皆長く搖動して勢をなす。一切身分皆悉く麁く起れり。かくのごとく種種に畏るべき形あり。堅く罪人の喉をしばる。かくのごとくして将て去こと六十八万千由旬の地、海州城をすぎて海外の辺にあり。又落行こと六億由旬なり。漸漸に下に向ふこと十億由旬なり。一切の風の中には業風第一なり。かくのごとく業風悪業の人を将て、彼閻羅の処に到る。閻羅王種種に呵責す。呵責已て悪業の羂に縛て出て向地獄。地獄の火焼こと薪草を焼が如し。将て向地獄大火聚あり。其火聚挙ること高五百由旬なり。其広こと二百由旬なり。炎の焼ること熾盛なり。虚空に皆悉く炎もゆ。鉢の孔計も炎の燃ざる処なし。罪人火の中にして声を発して、よばはること無量億歳なり。常に焼ことやまず。先の諸の罪の上に、又清浄の優婆夷をおかす者此地獄におつ。火を以てこれを焼、熱鉄の沸を以て其身体に潅ぐ。かくのごとく無量億歳大苦を受るなり。比丘の以酒誘誑持戒婦女。壊其心已て然後に共に行ひ、或は財物を与る者此地獄におつ云云。
八阿鼻地獄者涅槃経十九云阿者言無鼻者名間。間無暫楽故言無間。寒地獄中遇熱風以之為楽。熱地獄中暫遇寒風亦為楽。阿鼻地獄都無此事[云云]。六波羅蜜経云今在地獄現受諸苦。為十三火所纏。有二火焔従口入徹頂出。復有二焔従頂入通足出。復有二焔自背入従胸出。復有二焔従胸入自背出。復有二焔従左脇入穿右脇出。復有二焔従右脇入穿左脇出。復有一焔従首纏下。然於此地獄諸衆生身其形煖弱如熟蘇。為彼衆火交絡焚熱[云云]。大焦熱地獄の下にあり、欲界最下の処なり。大焦熱を去こと二万五千由旬なり。頭を下にし足を上にして堕ること二千年なり。[正法念経説也]
此阿鼻地獄は縦広八万由旬なり。八万由旬の内皆悉く猛炎なれば、隠とも争か可隠。天には七重の鉄の網を張、鳳凰の翅なりとも飛で去難し。地には鉄の城堅く閉。那羅延天の力なりとも破て出難し。刀の山周して四門あり。四門の外には獄卒阿防羅刹六十四の眼を見開て、手に鉄の棒をにぎり、鉾の剣を指挙て、口より猛火を吐、身の毛孔より炎を出して門外に立り。四の角に四の銅の狗あり、身の長四十由旬なり。眼は如電、牙は如剣、齒は如刀山、舌は如鉄荊、一切の毛孔より皆猛火を出す。其煙臭悪事、世間に可喩物なし。十八の獄卒あり、頭は羅刹の如く、口は夜叉の如にして六十四の眼あり。鉄の丸迸散ず。鉤牙上出たる事高さ四由旬なり。牙頭より火流て阿鼻城にみつ。頭の上に十八の牛頭あり。一一の牛頭に十八の角あり。一一の角の頭より猛火を出す。又七重の城の内に七の鉄幢あり、幢の頭より火沸こと、猶泉の沸が如し。其炎流迸て亦城の内に満。四の門のの上に十八の釜あり、沸る銅湯涌出て亦城内に満。一一の隔の間に八万四千の鉄の蠎大蛇あり、毒を吐火を吐て、阿鼻城に満、其蛇哮吼こと百千の雷の如し。大なる鉄丸をふらして亦城の内に満。五百億の虫あり、八万四千のあり。の頭より火流るること雨の如にして下る。此虫の下る時、猛火弥盛にしてく八万四千由旬を照す[観仏三昧経説也]。
瑜伽論第四云、東方多百瑜繕那の三熱の大鉄地の上より猛熾なる火あて、焔をあげて来て彼有情を焼に、皮を穿て肉に入、筋を断骨を破、復其髄を徹し焼こと脂燭の如し。南西北方も亦復かくのごとし。受る所の苦痛亦間隙なし。復熱鉄地の上にをき、大熱鉄の山にのぼらしめ、其口の中より其舌を抜出して、百千の鉄針を以てこれを張、皺〓なからしむること牛の皮を張が如し。復更に熱鉄の地上に仰臥、熱鉄の鈷を以て口を鈷で開かしめ、三熱の鉄丸を以て口の中にをく。即其口及咽喉を焼て、臓腑を徹して下よりして出す。又沸銅を以て其口に潅に、喉及口を焼、臓腑を徹して下より流出。前の七大地獄並に別処の一切の諸苦を以て一分として、阿鼻地獄の苦は一千倍勝れり。かくのごとく阿鼻地獄の人、大焦熱地獄の罪人を見れば佗化自在天処を見が如し。四天下の処欲界の六天地獄の気を聞ば、即皆消尽なん。何を以ての故に地獄の人は大に臭が故に。かくのごときの阿鼻大地獄の処をば、千分が中にをいて一分をも不説。何を以ての故に説尽すべからず。若人説こと有て若人聴こと有ば、血を吐て死なん[正法念経説也]。
此無間地獄の寿は一中劫なり[倶舎論説]。五逆罪を造り、因果を撥無し、大衆を誹謗し、虚く信施を食する者此地獄におつ[観仏三昧経説也]。諸の地獄の中に此地獄の苦最勝れたり。又黒く壯なる蛇有て彼罪人を繞て始足の甲より漸漸に齧食。亦一由旬の鉄の山上より下て彼罪人をうつに、砕事沙の揣なるが如し。砕已て復生じ、生已て復砕く。獄卒刀を以てく身分を割、極熱の白〓の汁其割処に入る。四百四病具足して常に長久の時有て大苦悩を受なり[云云]。