上野殿御書
431 上野殿御書
態御使難有候。夫については屋形造之由目出度こそ候へ。何か参候て移徙申候はばや。
一棟札事承候。書候て此伯耆公に進せ候。此経文は須達長者祇園精舎を造き。然に何なる因縁にやよりけん、須達長者七度まで火災にあひ候時、長者此由仏に問奉る。仏答て曰く、汝が眷属貪欲深き故に此火災の難起也。長者申さく、さていかんして此火災の難をふせぎ申べきや。仏の給はく、辰巳の方より瑞相あるべし。汝精進して彼の方に向へ。彼方より光ささば鬼神三人来て云ん。南海に鳥あり。鳴忿と名く。此鳥の住処に火災なし。又此鳥一の文を唱べし。其文云聖主天中天迦陵頻伽声哀愍衆生者我等今敬礼[云云]。此文を唱へんには、必ず三十万里が内には火災をこらじと、此三人の鬼神かくの如く告べき也[云云]。須達、仏の仰の如くせしかば、少もちがはず候き。其後火災なきと見えて候。
これに依て滅後末代にいたるまで、此経文を書て火災をやめ候。今以てかくの如くなるべく候。返返信じ給べき経文也。是は法華経の第三巻化城喩品に説て候。委は此御房に申含て候。恐恐謹言。 八月十八日 日蓮 花押 上野殿 御返事