妙傳寺聖典個人版 新・電子聖典

窪尼御前御返事

第二巻 定本番号 20420 弘安4(1281) 分類: その他

祖寿: 60 著作地: 身延 写本: 日興筆富士大石寺蔵

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    420   窪尼御前御返事
しなじなのものをくり給て候。善根と申は大なるによらず、又ちいさきにもよらず、国により、人により、時により、やうやうにかわりて候。譬へばくそ(糞)をほしてつきくだき、ふるいて、せんだん(栴檀)の木につくり、又、女人、天女・仏につくりまいらせて候へども、火をつけてやき候へばべちの香なし、くそくさし。そのやうに、ものをころし、ぬすみをして、そのはつを(初穂)をとりて、功徳善根をして候へども、かへりて悪となる。
須達長者と申せし人は月氏第一の長者、ぎおん(祇園)精舎をつくりて、仏を入れまいらせたりしかども、彼寺焼てあとなし。この長者もといを(魚)をころしてあきな(商)へて長者となりしゆへに、この寺つゐにうせにき。今の人々の善根も又かくのごとく、大なるやうなれども、あるひはいくさをして所領を給、或はゆへなく民をわづらはして、たから(財)をまうけて善根をなす。此等は大なる仏事とみゆれども、仏にもならざる上、其人々あともなくなる事なり。又、人をもわづらはさず、我心もなをしく、我とはげみて善根をして候も、仏にならぬ事もあり。いはく、よきたねをあしき田にうえぬれば、たねだにもなき上、かへりて損となる。まことの心なれども、供養せらるゝ人だにもあしければ功徳とならず。かへりて悪道におつる事候。
此は日蓮を御くやうは候はず、法華経の御くやうなれば、釈迦仏・多宝仏・十方の諸仏に此功徳はまかせまいらせ候。抑今年の事申ふりて候上、当時はとし(歳)のさむき事、生て已来いまだおぼへ候ず。ゆきなんどのふりつもりて候事おびただし。心ざしある人もとぶらひがたし。御をとづれをぼろげの御心ざしにあらざる歟。恐恐謹言。   十二月二十七日   日蓮  花押   くぼの尼御前  御返事