上野殿御返事
338 上野殿御返事
鵞目一貫・しほ(塩)一たわら・蹲鴟一俵・はじかみ少々、使者をもて送給了。あつきには水を財とす。さむきには火を財とす。けかちには米を財とす。いくさには兵杖を財とす。海には船を財とす。山には馬をたからとす。武蔵・下総には石を財とす。此の山中にはいえのいも・海のしほ(塩)を財とし候ぞ。竹子・木子等候へども、しほなければそのあぢわひ(味)つち(土)のごとし。又金と申もの国王も財とし、民も財とす。たとへば米のごとし、一切衆生のいのちなり。ぜに(銭)又かくのごとし。漢土に銅山と申山あり。彼の山よりいでて候ぜになれば、一文もみな三千里の海をわたりて来るものなり。万人皆たま(玉)とおもへり。此を法華経にまいらせさせ給。
釈まなん(摩男)と申せし人のたな心には石変じて珠となる。金ぞく(粟)王は沙を金となせり。法華経は草木を仏となし給。いわうや心あらん人をや。法華経は焼種の二乗を仏となし給。いわうや生種の人をや。法華経は一闡提を仏となし給。いわうや信ずるものをや。事々つくしがたく候。又々申べし。恐々謹言。 八月八日 日蓮 [花押] 上野殿 [御返事]