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阿仏房御書

第二巻 定本番号 20209 建治2(1276) 分類: その他

祖寿: 55 著作地: 身延 

    209   阿仏房御書
御文委披見いたし候畢。抑宝塔御供養物、銭一貫文・白米・しなじなをくり物、たしかにうけとり候畢。此趣御本尊法華経にもねんごろに申上候。御心やすくおぼしめし候へ。
一御文云、多宝如来涌現の宝塔何事を表し給やと[云云]。此法門ゆゝしき大事なり。
宝塔をことわるに、天台大師文句八に釈し給時、証前起後の二重の宝塔あり。証前は迹門、起後は本門なり。或又閉塔は迹門、開塔は本門、是即境智の二法也。しげきゆへにこれををく。
所詮三周の声聞、法華経に来て己心の宝塔を見ると云事也。今日蓮が弟子檀那又々かくのごとし。末法に入て、法華経を持つ男女のすがたより外には宝塔なきなり。若然者貴賎上下をえらばず、南無妙法蓮華経ととなうるものは、我身宝塔にして、我身又多宝如来也。妙法蓮華経より外に宝塔なきなり。法華経の題目宝塔なり。宝塔又南無妙法蓮華経也。今阿仏上人の一身は地水火風空の五大なり。此五大は題目の五字也。然者阿仏房さながら宝塔、宝塔さながら阿仏房、此より外の才覚無益なり。聞・信・戒・定・進・捨・慙の七宝を以てかざりたる宝塔也。多宝如来の宝塔を供養し給かとおもへば、さにては候はず我身を供養し給。我身又三身即一の本覚の如来なり。かく信じ給て南無妙法蓮華経と唱給へ。こゝさながら宝塔の住処也。経云有説法華経処我此宝塔涌現其前とはこれなり。
あまりにありがたく候へば宝塔をかきあらはしまいらせ候ぞ。子にあらずんばゆづる事なかれ。信心強盛の者に非んば見する事なかれ。出世の本懐とはこれなり。
阿仏房しかしながら北国の導師とも申つべし。浄行菩薩はうまれかわり給てや、日蓮を御とふらひ給か。不思議なり不思議なり。此御志をば日蓮はしらず、上行菩薩の御出現の力にまかせたてまつり候ぞ。別の故はあるべからず、あるべからず。宝塔をば夫婦ひそかにをがませ給へ。委は又々申べく候。恐恐謹言。  建治二年三月十三日   日蓮  花押  阿仏房上人所へ