上野殿御返事
147 上野殿御返事
鵞目十連・かわのり二帖・しやうかう(薑)二十束給候了。かまくらにてかりそめの御事とこそをもひまいらせ候しに、をもひわすれさせ給ざりける事、申ばかりなし。こうへのどの(故上野殿)だにもをはせしかば、つねに申うけ給なんと、なげきをもひ候つるに、をんかたみに御み(身)をわか(若)くしてとどめをかれけるか。すがたのたがわせ給ぬに、御心さえにられける事いうばかりなし。法華経にて仏にならせ給て候とうけ給て、御はかにまいりて候しなり。
又この御心ざし申ばかりなし。今年のけかち(飢渇)に、はじめたる山中に、木のもとに、このはうちしきたるやうなるすみか、をもひやらせ給。このほどよみ候御経の一分ことの(故殿)へ廻向しまいらせ候。あわれ人はよき子はもつべかりけるものかなと、なみだかきあえずこそ候へ。妙荘厳王は二子にみちびかる。かの王は悪人なり。こうえのどのは善人なり。かれにはにるべくもなし。南無妙法蓮華経南無妙法蓮華経。 七月二十六日 日蓮[花押] 御返事