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草木成仏口決

第一巻 定本番号 97 文永9(1272) 分類: その他

祖寿: 51 対告衆: 最蓮房 著作地: 佐渡 塚原 

    97   草木成仏口決
問云草木成仏者有情非情中何哉。答云草木成仏者非情成仏也。問云情非情共於今経成仏乎。答云爾也。問云証文如何。答云妙法蓮華経是也。妙法者有情成仏也。蓮華者非情成仏也。有情は生の成仏、非情は死の成仏、生死の成仏と云が有情非情の成仏の事也。其故は我等衆生死する時、立塔婆開眼供養するは死の成仏にして草木成仏也。
止観一云一色一香無非中道。妙楽云然亦共許色香中道無情仏性惑耳驚心。此一色者五色の中には何れの色ぞや。青黄赤白黒の五色を一色と釈せり。一者法性也。爰を以て妙楽は色香中道と釈せり。天台大師も無非中道といへり。一色一香の一は二三相対の一には非る也。中道法性をさして一と云也。所詮十界・三千・依正等をそなへずと云事なし。此色香は草木成仏也。是即蓮華の成仏也。色香と蓮華とは言はかはれども草木成仏の事也。
口決云草にも木にも成る仏也[云云]。此意は草木にも成り給へる寿量品の釈尊也。経云如来秘密神通之力[云云]。法界は釈迦如来の御身に非ずと云事なし。
理の顕本は死を表す、妙法と顕る。事の顕本は生を表す、蓮華と顕る。理の顕本は死にて有情をつかさどる。事の顕本は生にして非情をつかさどる。我等衆生のために依枯依託なるは非情の蓮華がなりたる也。我等衆生の言語音声生の位には妙法が有情となりぬるなり。
我等一身の上には有情非情具足せり。爪と髪とは非情也。きるにもいたまず。其外は有情なれば切にもいたみ、くるしむなり。一身所具の有情非情也。此有情非情、十如是因果の二法を具足せり。衆生世間・五陰世間・国土世間、此三世間有情非情也。
一念三千の法門をふりすゝぎ(振濯)たてたるは大曼荼羅なり。当世の習そこないの学者ゆめにもしらざる法門也。天台妙楽伝教内にはかがみ(鑑)させ給へどもひろめ給はず。一色一香とのゝしり、惑耳驚心とさゝやき給て、妙法蓮華と云べきを円頓止観とかへさせ給き。されば草木成仏は死人の成仏なり。
此等の法門は知る人すくなきなり。所詮妙法蓮華をしらざる故に迷ところの法門なり。敢て忘失する事なかれ。恐恐謹言。  二月二十日   日蓮[花押]   最蓮房御返事