上野殿母尼御前御書
74 上野殿母尼御前御書
母尼ごぜんにはことに法華経の御信心のふかくましまし候なる事、悦候と申せ給候へ。
止観第五之事。正月一日辰時此をよみはじめ候。明年は世間怱々なるべきよし皆人申あひだ、一向後生のために十五日まで止観を談とし候が、文あまた候はず候。御計候べきか。白米一斗御志申つくしがたう候。鎌倉は世間かつ(渇)して候。僧はあまたをはします。過去の餓鬼道苦をばつくのわせ候ひぬるか。
法門の事。日本国に人ごとに信ぜさせんと願して候しが、願や成熟せんとし候らん、当時は蒙古の勘文によりて世間やわらぎて候なり。子細ありぬと見へ候。本より信たる人々はことに悦げに候か。恐恐謹言。 十二月二十二日 日蓮 [花押]