妙傳寺聖典個人版 新・電子聖典

内記左近入道殿御返事

全集 第6巻 2段 定本: #20425(定本の該当ページへ)

書下し

内記左近入道殿御返事ないきさこんにゆうどうどのごへんじ


[1]春のはじめの御悦び、自他申しめ候ひおわんぬ。そもそも去年の来臨は曇華どんげの如し。た又夢か幻か。疑ひいまだ晴れず候処に、今年の始め深山の栖、雪中の室え、〔多国を経ての〕御使おんつかい、山路をふみわけられて候にこそ、去年の事はまことなりけるやと、おどろき覚へ候へ。他行の子細、越後公御房えちごこうごぼうの御ふみに申し候か。恐々謹言
[2]<日>正月十四日
[3]<人>日 蓮<花押>花押
[4]<先>内記左近入道殿御返事
[5]追申。御器の事は越後公御房申し候べし。御心ざしのふかき由、内房へ申させ給ひ候へ。
現代語訳

内記左近入道殿御返事


弘安五年(一二八二)一月一四日、六一歳、於身延、和漢混淆文、定一九〇七頁。

[1]春の始めの御悦びは、自他ともに慶賀に堪えません。そもそも去年、この身延までお訪ねいただいたことは優曇華の花を見るように思われて、夢か幻かと疑ったほどで、その思いもさめやらぬところに、今年の始めにまた、雪の降り積もった山中の庵まで、御使いの方が遠く多国を経て山路を踏み分けておいでになり、去年お訪ね下さったのは本当のことだったのだと、今になって感動している次第です。今度他行することの事情については、越後御房の手紙に記しておきました。恐れながらつつしんで申し上げました。
[2]<日>正月十四日
[3]<人>日 蓮 <花押>花押
[4]<先>内記左近入道殿御返事
[5]追って申します。御供養の御器のことについては、越後御房が申しあげます。御志の深いこと、内房の方へご伝言下さい。