大田殿女房御返事
308 大田殿女房御返事
八木一石付十合者 大旱魃の代に、かは(渇)ける物に水をほどこしては、大龍王と生て雨をふらして人天をやしなう。うえたる代に、食をほどこせる人は国王と生て其国ゆたかなり。
過去の世に金色と申大王ましましき。其国をば波羅奈国と申。十二年が間、旱魃ゆきて人民うえ死ぬ事おびただし。宅中には死人充満し、道路には骸骨充満せり。其時、大王一切衆生をあはれみて、おゝくの蔵をひらきて施をほどこし給き。蔵の中の財つきて唯一日の供御のみのこりて候し。衆僧をあつめて供養をなし、王と后と衆僧と万民と皆うえ死なんとせし程に、天より飲食雨のごとくふりて大国一時に富貴せりと、金色王経にとかれて候。此も又かくのごとし。此供養によりて現世には福人となり、後世には霊山浄土へまいらせ給べし。 日蓮 花押 大田入道殿女房 御返事