弁殿御消息
222 弁殿御消息
たきわう(滝王)をば、いえふく(家葺)べきよし候けるとて、まか(退)るべきよし申候へば、つかわし候。えもん(衛門)のたいう(大夫)どのゝかへせに(改心)の事は、大進の阿闍梨のふみに候らん。
一 十郎入道殿の御けさ。悦入て候よしかたらせ給。
一 さぶらうざゑもん(左衛門)どのゝ、このほど人をつかわして候しが、をほせ候し事、あまりにかへすがへすをぼつかなく候よし、わざと御わたりありて、きこしめして、かきつかわし候べし。又さゑもんどのにもかくと候へ。
かわのべ(河辺)どの等の四人の事。はるかにうけ給はり候はず。おぼつかなし。かの辺になに事か候らん。一々にかきつかはせ。度々この人々の事はことに一大事と天をせめまいらせ候なり。さだめて後生はさてをきぬ、今生にしるしあるべく候と存べきよし、したたかにかたらせ給へ。
伊東の八郎ざゑもん、今はしなの(信濃)のかみ(守)はげん(現)にしに(死)たりしを、いのりいけ(活)て、念仏者等になるまじきよし明性房にをくりたりしが、かへりて念仏者真言師になりて無間地獄に堕ぬ。のと房はげんに身かたで候しが、世間のをそろしさと申し、よく(慾)と申し、日蓮をすつるのみならず、かたき(敵)となり候ぬ。せう房もかくの如し。
おのおのは随分の日蓮がかたうど(方人)なり。しかるになづき(頭脳)をくだきていの(祈)るに、いまゝでしるしのなきは、この中に心のひるがへる人の有とをぼへ候ぞ。をもいあわぬ人をいのるは、水の上に火をたき、空にいえ(舎)をつくるなり。此由を四人にかたらせ給べし。むこり(蒙古)国の事のあうをもつてをぼしめせ、日蓮が失にはあらず。
ちくご房・三位・そつ等をばいとまあらばいそぎ来べし。大事の法門申べしとかたらせ給。十住毘婆沙等の要文を大帖にて候と、真言の表のせうそくの裏にさど房のかきて候と、そう(総)じてせゝとかきつけ(書付)て候ものゝかろきとりてたび候へ。紙なくして一紙に多人の事を申なり。 七月二十一日 日蓮 [花押] 弁殿