土木殿御返事
86 土木殿御返事
上のせめさせ給にこそ法華経を信たる色もあらわれ候へ。月はかけてみち、しを(潮)はひ(干)てみつ事疑なし。此も罰あり必徳あるべし。なにしにかなげかん。
此十二日酉時御勘気。武蔵守殿御あづかりにて、十三日丑時にかまくらをいでゝ、佐土の国へながされ候が、たうじはほんま(本間)のえちと申ところに、えちの六郎左衛門尉殿代官右馬太郎と申者あづかりて候が、いま四五日はあるべげに候。
御歎はさる事に候へども、これには一定と本よりご(期)して候へばなげかず候。いままで頸の切ぬこそ本意なく候へ。法華経の御ゆへに過去に頸をうしなひたらば、かゝる少身のみ(身)にて候べきか。
又数数見擯出ととかれて、度々失にあたりて重罪をけしてこそ仏にもなり候はんずれば、我と苦行をいたす事は心ゆくなり。 九月十五日 日蓮[花押] 土木殿御返事 御返事 日蓮