月満御前御書
79 月満御前御書
若童生れさせ給由承候。目出たく覚へ候。殊に今日は八日にて候。彼と云、此と云、所願しを(潮)の指が如く、春の野に華の開けるが如し。然ればいそぎいそぎ名をつけ奉る。月満御前と申すべし。
其上此国の主八幡大菩薩は卯月八日にうまれさせ給ふ。娑婆世界の教主釈尊も又卯月八日に御誕生なりき。今の童女、又月は替れども八日にうまれ給ふ。釈尊八幡のうまれ替りとや申さん。日蓮は凡夫なれば能は知ず。是併日蓮が符を進らせし故なり。さこそ父母も悦び給覧。
殊に御祝として餅・酒・鳥目一貫文送給候畢。是また御本尊・十羅刹に申上て候。
今日仏生れさせまします時に三十二の不思議あり。此事、周書異記と云文にしるし置けり。釈迦仏は誕生し給て七歩し、口を自開いて天上天下唯我独尊三界皆苦我当度之の十六字を唱へ給ふ。
今の月満御前はうまれ給てうぶごゑに南無妙法蓮華経と唱へ給ふ歟。法華経云諸法実相。天台云声為仏事等[云云]。日蓮又かくの如く推し奉る。
譬ば雷の音、耳しいの為に聞事なく、日月の光り目くらの為に見る事なし。定て十羅刹女は寄合てうぶ(産)水をなで養ひ給らん。あらめでたやあらめでたや。御悦び推量申候。
念頃に十羅刹女・天照太神等にも申て候。あまりの事に候間委は申さず。是より重て申べく候。穴賢穴賢。 日蓮[花押] 四条金吾殿御返事