教学キーマップ
日蓮(20)
日蓮五重相対
法華経の正・優位を判別するため、外道・小乗・権大乗・迹門・脱益と相対させ、種益(本門寿量品)を究極とする日蓮の教判。
- 内外相対仏教の内法 vs 仏教以外(外道)
- 大小相対大乗 vs 小乗(声聞・縁覚)
- 権実相対権大乗(爾前経) vs 実大乗(法華経)
- 本迹相対法華経 迹門(前半14品) vs 本門(後半14品)
- 種脱相対熟脱の益(迹門・在世) vs 下種の益(本門寿量・末法)
末法の衆生には種脱相対の「下種」のみが有効と日蓮は説く。
日蓮三大秘法
日蓮が末法の衆生のために立てた三つの根本法門。本門の本尊・戒壇・題目で構成され、互いに不可分。
- 本門の本尊十界曼荼羅。久遠実成の本仏釈尊を中心とする
- 本門の戒壇本尊を勧請して題目を唱える場。実践の道場
- 本門の題目南無妙法蓮華経。信行の総体
『三大秘法抄』ほか日蓮晩年の遺文に体系化されている。
日蓮三類の強敵
勧持品(第十三)に説かれる、末法において法華経の行者を迫害する三種の強敵。
- 俗衆増上慢在家の信仰なき大衆。罵詈・打擲する者
- 道門増上慢他宗の僧侶。邪な智で正法を誹る
- 僭聖増上慢聖人を装う高位の僧。最も難敵
日蓮聖人は自身が三類強敵に対する身読の行者であることを繰り返し示す。
日蓮本門・迹門
法華経 28品を前半 14品(迹門)と後半 14品(本門)に二分する見方。本門寿量品が眼目。
- 迹門序品〜安楽行品(14品)。垂迹の釈尊が説く方便と一乗
- 本門従地涌出品〜普賢勧発品(14品)。久遠実成の本仏を顕す
日蓮は本門寿量品を「本門の眼目」として末法の所依とする。
日蓮五綱教判
日蓮聖人独自の教判。教(何の経)・機(誰に)・時(いつ)・国(どこで)・序(順番)の五綱で法の選択を判定する。
- 教一切経の中で最高の経は何か → 法華経
- 機衆生の能力・素質 → 末法の凡夫
- 時時代の段階 → 末法
- 国弘通の場所 → 日本(東漸の最終地)
- 序法の弘まる順序(前法に後ろを越えず) → 末法の法は本門の題目
『教機時国抄』『顕仏未来記』等に体系化。
日蓮法華経の守護神
法華経の行者を守護するとされる諸天・善神。日蓮宗の修法・勧請の対象。
- 十羅刹女陀羅尼品の十柱の女神。法華経行者の擁護
- 鬼子母神十羅刹女の母。安産・子育ての守護神としても
- 三十番神一月三十日を分担して国・行者を守護する三十柱の神
- 四大天王持国・増長・広目・多聞。四方の守護
- 大梵天・帝釈天法華経会座の上首。仏法の擁護者
本尊曼荼羅の四隅・周縁に勧請される。修法・勧請の本文は宗派により異同あり。
日蓮唱題行(南無妙法蓮華経)
末法の本尊への信仰行として、五字「妙法蓮華経」または七字「南無妙法蓮華経」を口に唱える。日蓮宗の中心行。
- 南無帰命・帰依(梵語 namas の音写)
- 妙法不可思議の正法。法華経の意
- 蓮華泥中に咲く清浄の喩。因果倶時の象徴
- 経常住不変の道理(経=常)
- 五字 vs 七字五字は経の名そのもの、七字は帰命を加えた信行
建長5年4月28日 立教開宗の日、唱題を始めた。一念三千を文上に約す。
日蓮四箇格言
日蓮聖人の他宗批判の根本標語。当時の四宗を厳しく簡潔に評す。
- 念仏無間念仏(浄土宗)は無間地獄に堕す
- 禅天魔禅宗は天魔の所行
- 真言亡国真言宗は国を亡ぼす
- 律国賊律宗は国賊(戒律のみで救済なし)
『開目抄』『撰時抄』等で展開。現代の宗教対話の場面では、字面でなく当時の歴史的・教学的文脈で理解する必要がある。
日蓮十界曼荼羅(御本尊)
日蓮独自に図顕した本尊。中央に「南無妙法蓮華経」と日蓮花押、四方に諸尊を勧請。十界が曼荼羅上で互具する。
- 中央「南無妙法蓮華経」首題・日蓮花押
- 上方釈迦如来・多宝如来(二仏並座)
- 左右上行・無辺行・浄行・安立行 四菩薩
- 四隅四大天王・梵天・帝釈・大日如来・愛染明王 等
- 下方十羅刹女・鬼子母神・三十番神 等
佐渡以降 約一〇〇幅以上を御図顕。代表に始顕本尊・万年救護本尊・臨滅度時本尊 等。
日蓮立正安国論
文応元年(1260)日蓮 39 歳、北条時頼に上呈した諫暁書。正法を立てれば国は安んずと説き、四度の大難の発端となる。
- 客主問答十問九答の形式で展開
- 災難の原因謗法(特に念仏)による正法の衰退
- 三災七難飢饉・疫癘・兵革/日月薄蝕・星宿変怪 等
- 予言自界叛逆難・他国侵逼難。後に的中(蒙古襲来)
- 結論速やかに実乗の一善(法華)に帰依せよ
日蓮の社会的・国家的視座の原点。再三にわたり国諌を行う根拠書。
日蓮信・行・学
末法の修行を支える三要素。信を根に、行を実践とし、学で深化する。
- 信本尊と題目を信ずる心
- 行唱題と弘通の実践
- 学経・遺文を学んで信行を深める
信行学のバランス:信なき学は空理、学なき信は妄信、行なき信学は果なし。
日蓮無作三身
本門寿量品が顕す久遠本仏の本性。法・報・応の三身が因縁の造作によらず本来円満に具わる。
- 無作人為的修行で得たのでなく本来そのままにある
- 三身一体法・報・応が分かれず円融
- 久遠常住時間を超えて常住する仏身
日蓮宗の本仏観の核心。観心本尊抄等で詳説。
日蓮本化四菩薩
従地涌出品で大地より涌出した無数の地涌の菩薩の上首四人。本門弘通の根本菩薩。日蓮聖人は自らを上行菩薩の再誕と位置づける。
- 上行菩薩四菩薩の長。日蓮聖人が再誕と自覚
- 無辺行菩薩広大な行を担う
- 浄行菩薩清浄なる行を担う
- 安立行菩薩安立せる行を担う
神力品で本門結要の付嘱を受け、末法に題目を弘通する責任を担う。
日蓮五百塵点劫
寿量品に説かれる久遠成仏の劫量。五百千万億那由他阿僧祇の三千大千世界を磨り砕いた塵を、五百千万億那由他阿僧祇の国を過ぐる毎に一塵を下す。
- 本門の時量本門久遠の代表的数値
- 時量を超えた本仏実は数量で測れぬ常住本仏を示すための喩
日蓮宗の本仏観の根幹。三千塵点劫より遥かに遠く、本門の眼目とされる。
日蓮本因妙・本果妙
寿量品に顕れる久遠本仏の因と果。本因妙は仏が成仏する根本の因、本果妙はその果としての常住の仏身。
- 本因妙久遠の昔に立てた菩薩行=下種の因
- 本果妙久遠から常住する仏果
- 末法における意味末法の衆生は「本因妙」の道を歩む(題目唱える)ことで本仏に結ばれる
富士派は特に「本因妙抄」「百六箇抄」等で詳説するが、他派でも本門教学の核となる。
日蓮但行礼拝
常不軽菩薩品(第二十)の中心行。「我深敬汝等、不敢軽慢、汝等皆当作仏」と説いて、ただ礼拝し続けた菩薩の行儀。
- 本来仏性の礼拝一切衆生に仏性ありと信じて拝する
- 迫害忍辱罵詈打擲されてなお敬礼を続ける
- 二十四字の法華経不軽の四句二十四字は法華経の精髄
日蓮聖人は自らを常不軽菩薩の身読者と位置づける(『開目抄』)。
日蓮四力(信・行・仏・法)
末法成仏を成立させる四つの力学。信・行は衆生の側、仏・法は本尊の側。
- 信力本尊と題目を疑わず信ずる力
- 行力唱題と弘通を実践する力
- 仏力釈尊(久遠本仏)の救済力
- 法力妙法蓮華経そのものの法の力
富士派系で特に強調されるが、日蓮宗各派で末法成仏の理論として用いる。
日蓮折伏と摂受
仏法弘通の二つの方法。折伏は邪を破して正に帰せしめる積極的方法、摂受は包容して導く穏やかな方法。
- 折伏邪義を破折し正法に帰依せしむ。末法相応
- 摂受機を見て柔らかく包容して導く。正像時相応
- 時に応じた選択日蓮は末法は折伏の時とする
『開目抄』『佐渡御書』等で展開。実際の運用は時・国・機に応じ慎重に。
日蓮始顕本尊
日蓮聖人が文永十年(1273)佐渡にて初めて図顕したと伝える大曼荼羅本尊。十界曼荼羅形式の創始。
- 文永十年図顕佐渡塚原にて初顕
- 中央「南無妙法蓮華経」首題と日蓮花押
- 勧請釈迦・多宝・四菩薩・諸天・諸尊が十界曼荼羅として配される
以降、生涯にわたって弟子・檀越に多数の御本尊を授与。代表的なものに万年救護本尊・臨滅度時本尊 等。
日蓮末法万年
末法は一万年と説かれる。日蓮は末法万年の衆生のために法華経本門寿量品の題目を弘めると宣言。
- 末法の長さ正法・像法各千年に対し、末法は一万年とされる
- 令法久住末法万年の衆生のために法を久しく住せしめる
- 日蓮の使命末法万年の闇を照らす一仏乗の灯明
『顕仏未来記』『撰時抄』ほか、日蓮の未来観の表現。
天台(15)
天台五重玄義
天台智顗が経典を解釈する標準形式。五つの観点(名・体・宗・用・教)から経の意義を体系的に明らかにする。
- 釈名経題の名義を釈す。例:「妙法蓮華経」
- 弁体経の体(本質、所詮の理)を明かす。法華は実相を体とする
- 明宗経の宗(中心となる修行・到達)。法華は一乗の因果
- 論用経の力用(衆生に与える効益)。法華は二乗作仏・久遠実成
- 判教一代諸経の中での位置づけ。法華を最頂とする
天台十界互具
地獄・餓鬼・畜生・修羅・人・天・声聞・縁覚・菩薩・仏の十界が、互いに他の十界を具えるとする。10×10=百界。
- 六道地獄・餓鬼・畜生・修羅・人・天
- 四聖声聞・縁覚・菩薩・仏
- 互具ある界に他の十界が具わる。仏界も地獄界を具える
本来悪人にも仏界が具わる根拠。即身成仏の理論基盤。
天台一念三千
一念の心に三千の諸法が具わるという天台教学の頂点。十界互具×十如是×三世間=3,000。
- 十界互具十界が互いに具わる→百界
- 十如是相・性・体・力・作・因・縁・果・報・本末究竟(方便品)→千如是
- 三世間五陰・衆生・国土の三世間。一念三千
智顗『摩訶止観』に説き、日蓮が法華経本門寿量品で「事の一念三千」として実践化。
天台十如是
方便品に説かれる、諸法の十のあり方。「諸法実相」の具体的内容として、十界互具と並び一念三千の基礎を構成する。
- 如是相外に現れた相(すがた・形)
- 如是性内なる性質(本性)
- 如是体相・性を具える本体
- 如是力内に潜む力用
- 如是作外に現れる働き・造作
- 如是因結果を生む直接の因
- 如是縁因を助ける条件・縁
- 如是果因縁によって生じる結果
- 如是報果に伴う報い(果報)
- 如是本末究竟等相から報まで本末一貫して平等
方便品第二「諸法如是相、如是性、如是体…」。日蓮は朝夕の勤行で誦する。
天台五時八教
天台智顗が釈尊一代の説法を五時期・八教義に分類した教判。法華涅槃時を最頂に置く。
- 五時華厳→阿含→方等→般若→法華涅槃。釈尊説法の時期順
- 化儀の四教頓・漸・秘密・不定。説法の様式
- 化法の四教蔵・通・別・円。教えの内容
法華経は化法では円教・化儀では頓教にあたり、釈尊の本懐とされる。
天台一心三観
一念の心の中で空・仮・中の三観を同時に観ずる天台観法の核心。一念三千とは表裏一体。
- 空観諸法の実体性を否定し、自性なきを観ずる
- 仮観縁起によって仮に立つ諸現象を肯定して観ずる
- 中観空と仮を超え、両者を統合する中道を観ずる
智顗『摩訶止観』の中心観法。
天台六即位
凡夫から仏果に至る修行の六段階。本質は仏と同じ(即)でも、修行の階位は異なる。
- 理即理として仏性を具するが、自覚なき凡夫
- 名字即名前として仏法を聞き、理を知る位
- 観行即観行を実修する位
- 相似即仏に相似た悟りを得る位(六根清浄)
- 分真即真理の一分を悟る位(菩薩位)
- 究竟即究竟の悟り=仏果
智顗『摩訶止観』に説く。位の段階差はあっても本質は同じ「即」の思想が肝要。
天台諸法実相
一切の現象(諸法)は、ありのままで真実(実相)であるという法華経の根本理念。方便品「唯仏与仏乃能究尽諸法実相」。
- 唯仏与仏仏と仏のみ能く究尽する真理
- 十如是諸法実相の具体的内容(前項参照)
- 即事而真現象(事)そのものが真実(理)。事理不二
法華迹門の眼目とされ、本門の久遠実成と並ぶ法華経二大教説の一。
天台種・熟・脱の三益
仏が衆生を導く三段階の利益。下種→調熟→脱益の順で衆生は仏果に至る。
- 下種仏縁の種子を植える初発
- 調熟種子を育てて熟させる過程
- 脱益実を結んで生死を解脱する究竟の益
日蓮は「末法は下種の時」と立て、爾前・迹門の脱益と本門の下種益を区別する。
天台四悉檀
仏が衆生を教化する四種の説法方法。智顗が大智度論に基づいて整理。
- 世界悉檀世間の理解に応じて法を説く
- 各々為人悉檀個々の能力・性向に応じて説く
- 対治悉檀煩悩を対治するために特定の法を説く
- 第一義悉檀究極の真理そのものを直接に説く
悉檀は「成就(与えて成立させる)」の意。説法者の方便智の体系。
天台常寂光土
智顗の四土説(凡聖同居土・方便有余土・実報無障礙土・常寂光土)の最高位。仏の真実報土。
- 常常住不変
- 寂煩悩を離れた寂静
- 光智慧の光明
- 土住すべき仏国土
日蓮は「娑婆即寂光土」と説き、現実世界そのものが題目によって常寂光土に転じるとする。
天台経の三段
経典を序分・正宗分・流通分の三段に分けて読み解く伝統的な解釈法。法華経もこの三段で構造化される。
- 序分法を説く前の準備(序)
- 正宗分経の本体・中心の説示
- 流通分滅後への付嘱と流通の段
- 法華経 迹門序品/方便品〜授学無学人記品/法師品〜安楽行品 の三段
- 法華経 本門従地涌出品/寿量品/分別功徳品〜普賢勧発品 の三段
天台二処三会
法華経が説かれた場所と会座。霊鷲山と虚空の二処、三度の集会。
- 霊鷲山会序品〜法師品。地上の霊鷲山にて説法
- 虚空会見宝塔品〜嘱累品。多宝塔の出現により虚空に移って説法
- 再び霊鷲山会薬王品〜普賢勧発品。再び地上に戻って説法
「二処(霊鷲山・虚空)三会」と称す。法華経独自の壮大な舞台装置。
天台法華三大部
天台智顗の法華経注釈の三大著作。日本天台・日蓮宗教学の根本書。
- 法華玄義経題「妙法蓮華経」の五重玄義による解釈
- 法華文句法華経各品の文を逐次釈す
- 摩訶止観実践観法。一念三千・一心三観を体系化
日蓮の遺文には三大部の引用が極めて多い。教学研究の必読書。
天台教観二門
天台学の二大主柱。教(教相)は理論的解釈、観(観心)は実践観法。両者は車の両輪。
- 教相一代諸経の判釈と教理の体系化(五時八教等)
- 観心一念三千・一心三観などの実践観法
- 相依不離教は観の根拠、観は教の実体化。両輪あって完全
日蓮は教観を「南無妙法蓮華経」の唱題に集約する。
通仏教(25)
通仏教四弘誓願
菩薩が立てる四つの普遍的な誓願。勤行の結びによく唱える。
- 衆生無辺誓願度無辺の衆生を悉く済度せん
- 煩悩無量誓願断無量の煩悩を悉く断たん
- 法門無尽誓願知無尽の法門を悉く知らん
- 仏道無上誓願成無上の仏道を悉く成ぜん
通仏教三時思想(正像末)
釈尊滅後を 正法・像法・末法 の三期に分け、教・行・証の三が次第に欠ける時代観。日蓮の宗教観の根幹。
- 正法滅後一千年(または五百年)。教・行・証 三つが具足
- 像法次の千年。教・行はあるが証なし
- 末法以後一万年。教のみ。証悟なき混迷の時代
- 末法相応の法日蓮は末法には法華経本門寿量品=南無妙法蓮華経のみ有効と説く
日蓮在世は末法に入ったとされ(説により1052年起算)、これが立教開宗の前提。
通仏教弘経の三軌(衣座室)
法師品(第十)に説かれる、末世に法華経を弘める者が守るべき三つの儀軌。
- 柔和忍辱衣柔軟・寛容・忍辱を衣として着る
- 一切法空座一切は空なる中道に座する
- 大慈悲室大慈悲をもって室とする
法華経弘通者の精神的姿勢の基本。
通仏教四安楽行
安楽行品(第十四)に説かれる、末世の弘経者が実践すべき四種の安楽な行儀。
- 身安楽行俗事を遠ざけ静かに過ごす身の行
- 口安楽行人や他経の非を説かず温和な言葉を選ぶ口の行
- 意安楽行嫉妬・諂曲を離れた清浄な意の行
- 誓願安楽行衆生を救う大誓願を起こす行
末法の僧俗の修養指針として、各派で重んじられる。
通仏教四恩
報いるべき四つの恩。日蓮『報恩抄』はこの四恩を法華経の智と慈悲によって報ずると説く。
- 父母の恩生み育てた血縁の恩
- 衆生の恩一切衆生から受けた間接的な恩
- 国王の恩国土・社会基盤を護る公権力への恩
- 三宝の恩仏・法・僧から受ける法的な恩
日蓮の宗教観の倫理的基盤。「報恩」は終生のテーマ。
通仏教法華七喩
法華経に説かれる七つの主要な譬諭。仏の方便と一仏乗の真実を多面的に表す。
- 三車火宅譬諭品。三車を約して救い大白牛車を与える
- 長者窮子信解品。父との再会と本来の身分の自覚
- 三草二木薬草諭品。一雨が各々の機根に応じて潤す
- 化城宝処化城諭品。化城は方便、宝処が真実
- 衣裏明珠五百弟子品。すでに有る宝に気づかぬ譬
- 髻中明珠安楽行品。最後に与えられる至宝=法華経
- 良医病子寿量品。父医師の方便と本意
通仏教三身(法・報・応)
仏の身を三相に分ける仏身論。法華経本門寿量品の久遠本仏の理解の基礎。
- 法身真理そのもの。常住不変。色相なし
- 報身修行の果報として顕れる円満報土の身
- 応身衆生済度のため応現する身(釈尊もこの一つ)
日蓮は本門寿量品の久遠実成釈尊を「無作三身」として、修・性の対立を超えた本仏の身と説く。
通仏教二乗作仏
声聞・縁覚(二乗)は爾前経で成仏不能とされたが、法華経は二乗作仏を明示。一仏乗の根拠。
- 声聞仏の声を聞いて悟る者
- 縁覚十二因縁を観じて独覚する者
- 爾前の立場般若・方等経では二乗は焦芽敗種、成仏不可
- 法華の立場方便品・授記品で次々に授記。皆成仏道
迹門の眼目の一。提婆達多品では悪人・畜生・女人の成仏も加わる。
通仏教三毒
一切の煩悩の根本となる三つの毒。これを断つことが解脱の前提。
- 貪(とん)貪欲。執着
- 瞋(じん)怒り・憎悪
- 痴(ち)無明・愚かさ
日蓮は三毒を断つのでなく、唱題によって三毒即菩提と転ずる立場をとる。
通仏教六波羅蜜
菩薩が彼岸(覚り)に至るための六つの実践徳目。
- 布施財施・法施・無畏施
- 持戒戒を守る
- 忍辱辱めを忍ぶ
- 精進怠らず励む
- 禅定心を静かに集中する
- 智慧般若。物事の真実を観る
通仏教十二因縁
生死流転の原因を十二の支に分析した縁起の説。無明から老死へ。逆に観ずれば解脱への道。
- 無明・行根本の迷いと意志的造作
- 識・名色識別作用と心身の発生
- 六入・触・受六根と外境との接触・感受
- 愛・取渇愛とそれへの執著
- 有・生・老死存在の確立、生まれ、老い死す
縁覚(独覚)が観ずる修行対象。
通仏教四聖諦(四諦)
釈尊が初転法輪で説いた仏教の根本真理。
- 苦諦世間はみな苦であるという真理
- 集諦苦の原因は渇愛・煩悩であるという真理
- 滅諦煩悩を滅すれば苦も滅するという真理
- 道諦苦を滅する道(八正道)の真理
声聞乗の修行対象。法華経は四諦を超えて一仏乗に統合する。
通仏教戒定慧 三学
仏教修行の三本柱。三学は次第に互いを支え合う。
- 戒戒律。悪を防ぎ善を促す
- 定禅定。心を集中安定する
- 慧智慧。実相を観じる
日蓮は末法の戒定慧は「南無妙法蓮華経」に総じ摂まる(戒は本門の戒壇、定慧は唱題に具足)と説く。
通仏教八正道
四諦の道諦の内容。覚りに至る正しい八つの実践。
- 正見正しい見解
- 正思惟正しい思考
- 正語正しい言葉
- 正業正しい行為
- 正命正しい生計
- 正精進正しい努力
- 正念正しい憶念・気づき
- 正定正しい禅定
通仏教四依
正法を学ぶ際に依りどころとすべき四つの基準。
- 依法不依人人に依らず法に依る
- 依義不依語言葉でなく義(趣旨)に依る
- 依智不依識感覚的識でなく智慧に依る
- 依了義不依不了義了義経(究極を説く経)に依る
日蓮は「依了義経」の立場から、法華経を唯一の依り経と定める。
通仏教三業
人の行為を三種に分けて把握する。修行・懺悔の対象でもある。
- 身業身体による行為
- 口業言葉による行為
- 意業心による思い・意志
結経 観普賢菩薩行法経の六根懺悔は、三業を根本から浄化する観行。
通仏教十界
迷悟の生命を十段階に分けた仏教の世界観。六道(迷い)と四聖(悟り)。
- 地獄界極苦の境涯
- 餓鬼界飢渇に責められる境涯
- 畜生界愚痴に支配される境涯
- 修羅界闘諍・嫉妬の境涯
- 人界苦楽相半ばする境涯
- 天界一時の歓楽の境涯
- 声聞界仏の声を聞いて悟る境涯
- 縁覚界十二因縁を観じて悟る境涯
- 菩薩界自他共に成仏を願う境涯
- 仏界究極の覚りの境涯
十界互具と組み合わせて百界、一念三千の基礎を成す。
通仏教三千塵点劫
化城諭品に説かれる久遠の数量喩。三千大千世界を磨り砕いて塵となし、千国を過ぎる毎に一塵を下し、塵尽きてもなお往昔の劫数及ばず。
- 譬の目的大通智勝仏の時、釈尊と一切衆生が法華経の縁を結んだ昔の遠さを示す
- 迹門の時量迹門寿命観の代表的数値
寿量品の「五百塵点劫」と並び、法華経の時間観の双璧。
通仏教三障四魔
修行を妨げる三種の障害と四種の魔。日蓮聖人も度々遺文で警告。
- 煩悩障貪瞋痴等の煩悩
- 業障過去・現世の悪業
- 報障悪業の報いとして受ける苦しい境涯
- 陰魔五陰(色受想行識)から起こる魔障
- 煩悩魔煩悩そのものが妨げる
- 死魔死に至る心身の衰弱
- 天子魔第六天魔王が修行を妨げる
日蓮『兄弟抄』に「三障四魔競い起る」と説き、行者の精進を励ます。
通仏教三宝
仏教の根本所依。三帰依の対象。
- 仏宝覚りを開いた仏
- 法宝仏の説いた教え(法)
- 僧宝法を伝持する僧伽(さんが)
日蓮では「南無妙法蓮華経」に三宝が具足するとする。
通仏教五蘊(五陰)
人間存在を構成する五つの集まり。無我・無常の根拠。
- 色物質的な身体・形
- 受感受作用
- 想表象作用
- 行意志・形成作用
- 識識別作用
般若心経「五蘊皆空」。五蘊から起こる魔を陰魔(三障四魔の一)と呼ぶ。
通仏教三世
過去・現在・未来の三世。仏教の時間観・因果観の基礎。
- 過去世宿世。今に至る因の集積
- 現在世今の生。因の果と新たな因の場
- 未来世当来。今の因が成熟する果の場
三世因果。「過去の因は現在の果、現在の因は未来の果」(『開目抄』)。
通仏教八難
仏に会えず正法を聞けない八つの困難な境涯。仏縁の貴重さを示す。
- 地獄極苦に責められて法を聞けず
- 餓鬼飢渇で法を聞けず
- 畜生愚痴で法を聞けず
- 長寿天楽過ぎて求道心起こらず
- 辺地仏法の伝わらぬ辺境
- 盲聾瘖瘂感覚障害で法を受け取れず
- 世智弁聡世智に偏り正法を曲解
- 仏前仏後仏の在世でも滅後正法でもない時
「人身受け難し、仏法聞き難し」の根拠。
通仏教七宝(法華七珍)
法華経 見宝塔品ほかに説かれる七種の宝。仏国土の荘厳・供養の象徴。
- 金こがね
- 銀しろがね
- 瑠璃るり(青色の宝玉)
- 硨磲しゃこ(白色の貝の宝)
- 瑪瑙めのう
- 真珠しんじゅ
- 玫瑰まいかい(紅色の宝玉)
宝塔品の多宝塔は七宝で荘厳される。経典・本尊の表現にも用いる。
通仏教後五百歳
法華経 薬王菩薩本事品に「我滅度後 後五百歳中」と説かれる時。末法に法華経が広宣流布する時期を指す。
- 滅後五箇五百歳解脱堅固→禅定→読誦→多造塔寺→闘諍堅固 の五区分
- 第五五百歳闘諍堅固=末法の時。法華経流通の時
- 日蓮の自覚自身が第五五百歳に出現した上行菩薩の再誕と捉える
末法思想と結びついて、日蓮の使命感の根拠となる。